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ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


1.始まりの夜

2010.03.23  *Edit 

「かんぱ〜い!!」

明るい掛け声とともに、グラスを合わせた。
一次会でもうすでにお酒が入っているので、みんなすっかり出来上がっている。
清水桃佳(しみずももか)も例外ではない。
しかも、桃佳はお酒が強いほうではない。
・・・というよりも、つい最近二十歳になったばかりで、まだアルコール自体に慣れていないのだった。
それでも場の雰囲気もあり、いつもよりも多めに飲んでいたので、桃佳は頬が熱くなっているのを自分でも感じていた。
だから、少し輪から離れたところで、一息ついていたところだ。

「桃佳、大丈夫?」

そう声をかけてきたのは、友人の杉田みなみ。
この合コンに誘ってきたのも彼女。
どうしても人数が足りないと、桃佳に泣きついてきたのだった。

「うん。大丈夫・・・」
桃花の声の調子は、とろんとした響きを含んで、どちらかというと大丈夫な感じではない。
「私のことは気にしなくっていいから、楽しんでよ」
そう笑うと、みなみはちょっと申し訳なさそうな顔をする。
みなみにとって、桃佳も桃佳の彼氏である駿も大事な友達だ。付き合っているのを知っていてこの合コンに誘った手前、やっぱり罪悪感のようなものが胸をチクリと刺した。
「ごめんね・・・桃佳。駿(しゅん)君は大丈夫?何も言われなかった?」
「大丈夫。駿ちゃんにはちゃんと本当のこと言って来てるから」

駿。
柴山駿(しばやましゅん)は、桃佳の彼氏だ。
付き合って半年になろうとしている。
明日、駿の家に初めて遊びに行く予定になっている。
人数合わせで合コンに行くと言っても、駿はにこやかに「あまり飲みすぎないようにね」と言っただけだった。

「駿君、合コンに行くの、嫌がらなかったんだ!」
みなみが感心したような声を上げた。
「うん。あんまり飲みすぎないようにね、だって」
「へえ。ホントに桃佳のこと信用してるんだね」
「まあ、ね」

「みなみちゃ〜ん!!」

誰かがみなみを呼んでいる。
華があって明るいみなみはこの合コンの中心人物だ。
「ほら、みなみ。呼んでるよ」
「うん。桃佳、あんまり飲みすぎないでね。顔真っ赤。何かあったら、私、駿君に怒られちゃう」
「大丈夫。ダメそうだったら帰るから、私のことは気にしないでね」
「分かった。無理しないでいいからね」
そう言いながら、みなみは呼ばれた方に走って行った。

「怒られちゃう・・・か」
桃佳はぽつりと独り言を言った。

多分、駿が怒ることはない。
事実、この半年、駿が一度だって怒るところを見たことがない。
喧嘩をしたって、桃佳が寝坊をして約束に遅れたって、ただの一度も怒ったことがなかった。
ぜいたくな悩みと言われるかもしれないけれど、桃佳にとって、それは多少なりとも物足りなさを感じてしまう。
もちろん、駿に不満があるわけではないのだけれど・・・。
そう、あんなに優しい人、他にはいない。
不満なんて、あるわけないんだ。
そんなことを考えながら、完全に輪から外れ、桃佳はカウンターの椅子に腰かけた。

「すいません、ウーロン茶ください」

火照るように熱い頬を両手で包みこんで、ウーロン茶を注文する。
そろそろアルコール以外のものを飲んでおかないと、明日駿の家には行けなくなってしまうかもしれない。
今頼んだウーロン茶を飲んだら、もう家に帰ろう。
そんなことを考えながら、頬杖をついた姿勢のままで、桃佳は「ほう」と、熱い息を吐く。
肩よりも少し長めの栗色の髪がさらさらと流れる。
ぱっちりとした瞳は、すっかりとろんとしていた。


「みんなのところ、戻らなくてもいいの?」


合コンのメンバーとは違う、低く響く声。
その声が自分に掛けられたと知って、桃佳は驚いて声のした方を見た。
椅子を二つはさんだ右隣、彼は柔らかな笑顔で桃佳を見ていた。

「え・・・?あの、はい」

誰だっけ?
記憶を総動員しても、こちらを見て微笑んでいる人が誰なのか分からない。
第一、一度見たら、絶対に忘れるはずがなさそうだ。
細面で、端正な顔立ち。
本当に、まるで彫刻のようにきれいな顔。
きれいなさらさらの栗毛は地毛のようだ。
その栗色の前髪の下で、優しげな瞳が微笑んでいる。
よくテレビで見る、名前は忘れてしまったけれど「イケメン」と言われている俳優にどこか似ていた。もしかしたらその人よりも綺麗な顔立ちをしているかもしれないと、桃佳は思った。
アルコールのせいとは別に、頬が熱くなるのを桃佳は感じた。

「一緒に来てたんじゃないの?」
彼はそう言って、みんなのほうを指さす。
「ええっと、はい。でも、いいんです。みんなちゃんと盛り上がっいるみたいだから」
「そうなんだ。じゃあさ、一緒に飲まない?ひとりで退屈してたんだ」
「ええ!?」
「だめ?」
優しげな瞳で、『だめ?』と聞かれて、桃佳は『ウーロン茶を飲んだら帰るつもりだ』という言葉を見失ってしまう。
「いえ、そんな。だって・・・」
「じゃあ、決まりだね」

顔とは似合わぬ強引さで、彼はにこやかな笑顔のまま、自分のグラスをもって桃佳の隣に座った。
彼はきっと背が高いのだろう。
身長の低い桃佳と並ぶと、頭ひとつ分大きさが違う。
「名前は?」
「・・・桃佳です」
桃佳は彼を見上げながら答える。目が合って、桃佳は慌てて下を向いた。
「桃佳ちゃんね、俺はワタル。よろしくね。せっかくだから、乾杯しよう。甘いカクテルなら飲める?」
「え?はい。あ、でも私・・・」
最後の言葉をかき消すように、ワタルはもう何かカクテルをたのんでしまっているようだった。
すぐにたのんだものが運ばれてくる。
ワタルはそのグラスを桃佳に渡すと、「乾杯しよう?」と、自分のグラスを差し出した。
今ならまだ『もう帰るつもりだ』と言えたはずなのに、その言葉はとうとう口にされることはなかった。
戸惑いながらも、桃佳もグラスを差し出す。

「乾杯」



心臓が、どきどきと高鳴っている。
アルコールのせいじゃない。
そのことを、桃佳もよく知っていた。









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