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ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


10.きっと知らなければいけない

2010.03.23  *Edit 

この一週間、桃佳は生きた心地がしなかった。

いつ目の前に現れるとも分からない、駿の兄、多希。
それに、あの夜に何かあったんじゃないのかと疑っている多希の弟、駿。
ただ駿は、突然に訪ねてきたあの日、今までとは違う、強引な抱き方をした後、桃佳を疑うことをやめたようだ。
実際駿は、強引な自分さえも桃佳が受け入れてくれたことにとても満足していたし、こんな自分も受け入れてくれる桃佳のことを疑うなど、もっての外だとさえ思っているくらいだった。
実習前で会う機会も減ってはしまったものの、一日に何回ものメールのやり取りをしているので、まるで一緒にいるかのようだ。
付き合い始めの頃はそんなやり取りが楽しかった桃佳だったけれど、最近の弱った精神状態では、そのメールのやり取りさえも時々は苦痛だった。



「ごめん!!桃佳!!」

突然にみなみに頭を下げられて、桃佳は面食らった。
「どうしたの?みなみちゃん」
「ほんっっっと、ごめんね!!」
みなみは頭を下げたまま、頭の上で拝むように手を合わせている。
「どうしたの?やだ、もう。頭上げてよ」
桃佳は焦ってみなみの顔を覗き込む。謝られる覚えなんて、これっぽっちもない。
「ごめんね、桃佳。私が合コンになんか誘ったせいで、駿君に色々誤解されていたんでしょ?」
そう言うとみなみは再び「ごめん!!」と言って、深々と頭を下げた。
その肩をあわててつかんで、桃佳がみなみの体を起こす。
「みなみちゃん、大丈夫だから、頭上げてってば。それに、そんなこと、いったい誰に聞いたの?」
やっと顔を上げたみなみの顔が、すまなそうに曇っている。
「章吾に聞いたの。駿君が、あの合コンの日に桃佳に何かあったんじゃないかって気にしてたって」
「やだ・・・ごめん。心配かけちゃったね」
「ごめんなんて言わないでよ!!私が無理やり誘っちゃったから、こんなことになっちゃったんだから。今週、ずっと元気がなかったのって、駿君とのことだったんでしょ?」
「・・・」本当はそれだけではないのだけれど・・・桃佳は栗色の髪の毛を指先に絡めとる。「・・・うん」
「やっぱりね。だから私、ちゃんと駿君にあの夜のこと言っておいたから」
「何を!?」
桃佳の心臓が、どきりと跳ね上がる。
「何を・・・って、あの日、桃佳、ちょっと飲みすぎたみたいで、途中で帰ったみたいって。他のメンバーは全員残っていたから、あの合コンでどうこうってことはないと思うって」
そうでしょう?という目で、みなみが桃佳を見ている。
そう、間違っていない。
あの日、飲みすぎていたから、水を一杯飲んでから帰るつもりだった。
その時に、多希に会ってしまった。
確かにあの時のメンバーとは何もない。
みなみはあの夜のことを、やっぱり見てはいなかったようだ。
「うん。間違ってない」
みなみに嘘をついたような気がして、心臓がチクリと痛む。
みなみは自分の発言が正しかったことを立証して、少し声を張る。「だから私、駿君に言ってやったの。桃佳は何もやましいことなんかしてないんだから、心配しないでって。大体、桃佳が浮気とかするとは思えないし」
・・・私、みなみちゃんの思っているような人じゃない。
桃佳の心臓は、さっきとは別物にならない、ずきりとした痛みに襲われた。
「駿君ね、もう疑ってないって言ってたから安心して。なんでも、確かめたから・・・とか言ってたけど、何があったのお?」
みなみが面白そうに、肘で桃佳をつつく。
確かめたなんて、まあ、きっとそういうことなのでしょう。しかも、かなりアレな感じなんでしょうねえ。
なんて、色々といやらしいことまで想像してしまうみなみ。
桃佳もあの時の駿とのことを思い出して、かああああ、と耳まで一気に赤くなってしまった。
「お?桃佳、耳まで真っ赤」
みなみが、ふふふと笑う。
「いや、あの、これはね。なんか、暑いね」
「いやいや、今日はそんなに暑くないと思うけどー?」
「そうかなあ」

あんなふうに抱かれたあとで、桃佳は何となくずっと駿に抱きしめられているような感覚を覚えていた。
思い出そうとすれば、駿の指や唇の感覚まで、ふっと蘇ってくる。
それはどちらかと言うと幸せな感覚。
だけれども今の桃佳には、ただその感覚を幸せなものだと感じることができない。
あの時の駿の感覚を思い出して幸せだと思うたびに、いやでも多希の存在を思い出してしまう。
駿と多希は兄弟。とても切り離して考えることなどできない。
駿のことを大事だと、好きだと思うたびに、桃佳は深い罪の意識に苛まれる。
だからこそ、一日何回も来る駿からのメールさえも、辛いのだった。
いつも桃佳を心配して、『会いたいとか』『大事だ』とか、素直に気持ちをぶつけてきてくれる駿。
そんなメールを見るたびに、桃佳も駿と同じ気持ちになる。
それでも、たとえ桃佳が望んでそうなったわけではないとしても、彼の兄と体の関係を持ってしまった以上、駿に対する自分の気持ちをどうしていいのか分からない。
・・・それ以上に、どうして多希が自分が弟の彼女だということを知っていてあんなことをしたのか、それがどうしても分からなかった。
駿の部屋で見た二人は親密そうで、まるで当てつけのように弟の彼女と関係を持つなんて考えられない。
『駿への当てつけ』
その考えが、桃佳の中でぐるりと回る。
それはまるで、なくしていたパズルの最後のピースを見つけたような・・・。


「とにかくね」みなみが明るい声を出す。「駿君はもう疑ってないって言ってたし、桃佳は心配しなくっても大丈夫だから。それに、もう合コンには誘わないって約束してきたからね」
「うん。ごめんね、みなみちゃん」
「だーかーらー。桃佳が謝ることじゃないって言ってるでしょう?」
「うん。ごめ・・・じゃなくって、ありがとう」
「そうそう。それでいいの」
みなみが満足げに微笑む。
講義開始のベルが鳴り、みなみは桃佳に軽く手を上げた。「じゃ、またあとでね」
「うん」


自分の席に座り、桃佳はさっき自分の中を駆け巡ったひとつの仮説に思いを巡らす。
『駿への当てつけ』
そう考えれば、なんとなくすべてが説明できるような気がした。
『駿への当てつけ』のために自分と関係を持ったのだとして、何が多希にそこまでさせたのか。
それはもう、桃佳がいくら考えても分かることではなさそうだ。
多希に再び会うのは怖い。
けれど、多希に会わなければ、自分がどうしてこんなことになったのか、そのわけもきっと分からないのだろう。
きっと桃佳は知らなければいけない。




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