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ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


16.ゲームの始動と企み

2010.03.24  *Edit 

「ゲームの話をしようか」


その話は、聞きたいようでいて、聞くのが怖い。
けれど聞かなければ決して前には進めない。
桃佳は決心して震える声で「はい」と答えた。
その内容を聞いて、「私、したくありません」と言って許されるものではなく、どうあってもそのゲームに参加しなければならないだろうことが分かっているだけに、緊張を隠せない。
その思いが伝わったのか、「そんなに緊張することないよ」と、多希は笑って見せる。
けれど、そんなふうに笑われても、桃佳としては少しも心が軽くなどならない。

「この間言ったことは覚えてる?」
「え?」
おろおろとする桃佳の目の前に、彼は三本指を立てて見せた。
「まず、駿には何も話さない。次に駿とはこのまま付き合っていてもらう。最後に、俺の言うことを聞いてもらう」そう言ってにこりと笑う。「どう?思い出した?」
確かに、駿の家から送ってもらう車の中で、そんなことを言われたのを思い出す。
「・・・思い出しました」
「それはよかった」
多希はもう一度にこりと笑って見せたが、桃佳の緊張は高まるばかりだった。

「その条件を踏まえて、ゲームの説明をしようと思うんだ」
「はい」
「ところで、モモは駿と付き合いだしてどれくらいになるの?」
「駿ちゃんと?」突然にそんなことを聞かれて、驚きながらもカレンダーを確認する。「・・・もうすぐ7ヶ月になりますけど」
「そっか」
「何か関係があるんですか?」
「あるよ。駿と付き合って7ヶ月ね・・・。じゃあ4ヶ月くらいでいいかな」
「何がですか?」
「俺と一緒に過ごしてもらいたいんだ。4ヶ月。今日が6月10日だから、10月9日まで」
多希は桃佳の瞳を真正面から見つめている。けれど、桃佳には彼の言いたいことがよく分からなかった。
「4ヶ月・・・多希さんと一緒に過ごすんですか?」
「そう。基本的には月曜日から金曜日までは俺と。駿とは土日で会えばいい。どうせ、駿は平日バイトでモモに会うことなんてできないだろうからね」
にやりと笑う多希の顔に、桃佳ははっとする。
考えてみれば変なのだ。それまでバイトをしようと思うなんて言ってもいなかった駿が、突然にバイトを始めたこと自体が。
「・・・まさか、多希さんが?」
「そう。バイトでもしてお金ためて、彼女を旅行にでも誘ったら喜ぶんじゃないかって言ってやったんだ。それで、モモの家とは正反対にある、俺が昔バイトしていたところを紹介してあげた。アイツ何も疑わずにバイト始めたよ」
そう言いながら面白そうに笑う多希の顔は、とても意地悪で、さっき桃佳と向かい合って食事をしていた穏やかな彼とはとても同一人物とは思えなかった。
穏やかな顔を見せていたと思ったら、急に悪魔のような表情を見せる。どれもが多希で、どれも多希ではないような、そんな不思議な感覚を桃佳は抱いていた。
「だから」多希の声に、はっとして彼を見る。「駿には邪魔されない」
「それで、一緒に過ごしてどうするんですか?」
「別に何もしなくていいよ」
「は?」
桃佳の反応に、多希は思わず「ぷ」っと吹き出す。「さっきからモモは、『え?』とか『は?』とかばっかりだな。俺、そんなに変なこと言ってる?」
「言ってますよ!」
桃佳は思わずふくれっ面になる。「多希さんが何を言いたいのか、全然分かりません!」
「そっか。じゃあ分かりやすく説明しようか。
モモは俺とこれから4ヶ月間一緒に過ごしてもらう。別に何かしなきゃいけないわけじゃない。そうだな・・・家族みたいにこうして一緒に過ごしたり、ご飯食べたりできたらいいかな。さっきも言ったように、初めの三つの条件は生きてるものと思って。駿に俺たちのことを話すのも、駿と別れるのもルール違反だよ」
「はい」
「そして、ここからが重要。俺、モモのことが気に入ったんだ」
「え・・・は!?きゃあ!!」
桃佳は驚いたように顔を上げ、その拍子に手元のお味噌汁をこぼしてしまった。
「大丈夫?人の話はもう少し落ち着いて聞かなきゃだめだよ」
「はあ」
多希が苦笑いをしながらティシュでテーブルの上を拭いてくれる。桃佳もキッチンから布巾を持ってきて、テーブルの上を片付けた。
片付けながら、多希のことを盗み見る。
『気に入った』ってどういうつもりで言ったのだろう・・・。
桃佳のすぐ目の前でさらさらの栗毛が流れ、服の隙間から意外と筋肉質な肩が見える。桃佳は思わず手を止めて見入ってしまっている自分に気がつくと、首を振った。
「どうした?」
「何でもありません。ゲームの話し、続けてください」
あわてて彼から目を逸らし、下を向く。顔が赤くなっているのを気づかれたくはなかった。

「ああ。俺がモモを気に入ったってところまで話したね」
「はい」
「だから俺は、モモを自分のものにしたい」
その言葉にすっかり赤くなってしまった顔を上げてしまった。赤くなった桃佳の顔を見て、多希は微笑む。
「けど、恥ずかしい写真をネタに無理やり・・・ってのはあんまりだろ?だから、モモは駿とこのまま付き合っていてもらってかまわない。この4ヶ月間、ずっと駿のことを思い続けていられたらモモの勝ち。もう付きまとったりしないし、写真も全部返そう」
「もし・・・」
多希さんのことを好きになってしまったら?
私が負けたら?
その言葉を桃佳はぐっと飲み込んだ。そんなことがあるはずがない。あっていいはずがないのだから。
「もしも、モモが俺のことを好きになったら」桃佳の言葉を引き継ぐように、多希が続ける。「そのときはモモの負け。自分の口で駿に全て話してもらう」
「ええ!?」
「自信ない?」
「そんなこと・・・」ぐっと拳を握り締める。そう、自分さえ、しっかりしていればいいこと。「そんなことないです」駿のことを思っていればいいだけのこと。
「じゃあ、ゲーム開始だね。期間は4ヶ月間」
「約束してくれるんですよね」
「何が?」
「写真のこととか、さっき言ったこと全て」
伺うような桃佳の視線に、多希は苦笑いをする。どうやら全く信用されていないらしい。けれどそれは仕方のないことだ。
「大丈夫。約束するよ」
「分かりました。じゃあ、ゲーム開始ですね」
「ああ。開始だ」


「はああ」
話が終わって、桃佳は力が抜けて机に突っ伏した。
ずっと張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れたようで、どうにも体に力が入らない。
ゲームの内容はハチャメチャなものだし、多希が桃佳を『自分のものにしたい』だなんてことを言いだしたりで、少しもほっとできるような状況ではないものの、それでもこの先の自分がどうなるのかが少し見えただけでも、彼女の心はほんの少し軽くなっていた。
あとは、自分がきちんと駿を思っていればいいだけ・・・。
そう思った途端、背中がふわりと温かくなる。頬をさらりと栗色の髪が撫で、意外とがっちりとした腕が背中から桃佳を包み込んでいる。
「た、多希さん!!」
振りほどこうと思っても、すっぽりと包み込まれた体は、桃佳の思い通りには動かない。
「ひとつモモを安心させてあげる。だからじっとして」
「え?」
動きを止めた桃佳を、多希は更に強く、けれど優しく抱きしめる。
「ゲームの間、俺はモモに手は出さないから」
「どうして?」
言ってからはっとする。これではまるで手を出して欲しいと言っているような気がして、桃佳の顔は一気に火照った。後ろから抱きしめている多希に、顔を見られないで済むのが救いだった。
「前にも言ったろ。一応、モモは被害者。モモにばっかり負担をかけるのは可哀想だからね。俺も我慢」
言いながら桃佳の顎をつかむと、自分の方に向かせて唇を重ねる。顎をつかまれ、長い腕にしっかりと抱え込まれて、桃佳は抵抗することすらできない。
数秒そうしてから、多希は彼女の顎をつかんでいた手を離した。それと同時に唇も離れる。
「・・・これって、手を出したことにならないんですか?」
桃佳が恨めしげな声を出す。
「んー。ならないでしょ。俺の言ってる手を出さないって、セックスしないってことだもん。あ、もちろんモモのリクエストがあればいつでも手を出すけどね」
「リクエストなんてしません!!」
「リクエスト、待ってるよ」
笑っている多希のリズムと、そのぬくもりを桃佳は背中で感じていた。





「じゃあお休み」
「・・・お休みなさい」


そう挨拶を交わして、多希は自分の部屋へと戻った。
真っ先に冷蔵庫を開ける。冷蔵庫の中には、缶ビールと缶コーヒーしか入っていない。多希は少しだけ迷って、缶ビールに手を伸ばすと、蓋を開けてビールを一気にあおった。
ふうと大きく息をついて、ベットの上に腰掛ける。
タバコに火をつけ、薄く漂う煙を見つめながら目を細める。
「・・・調子狂わされてんな」
ぼそりと呟いた。

本当は『ゲーム』の話は、桃佳にせがまれてから、もったいぶって話してやるつもりだった。
それを親切に自分から話してしまうなんて・・・。

さっき桃佳に頭を撫でられ、つい動揺して『ゲーム』のことを口にしてしまったことを思い出し、多希は「ちっ」と舌打ちをした。
それでもゲームは始動した。
最初は、写真をネタに好きにしてやろうと思っていた。駿の大事な桃佳を思う存分いたぶって、味わいつくして、飽きたら捨ててしまおうと・・・。
けれどそれでは、駿よりも桃佳の方が傷ついてしまう。
それでは意味がない。
より駿にとって辛くなければ。
それに・・・と多希は思う。
女を好きだという自分を演じてみるのも面白い。
桃佳を好きだと言って、彼女のことばかり考えてみるのも面白そうだ。
もしも彼女が自分を好きにならなくても、長い時間一緒に他の男と過ごした罪悪感を、あの桃佳が持たないはずはない。
きっとゲームが終了したら、駿と別れることになるに違い。
それに、もしも桃佳が自分のことを好きになったりしたら・・・?

ぎゅっとタバコの火をもみ消して、多希は笑う。
薄暗い部屋の中で。


「そのときは、ゲームの終わりと共に、きちんと捨ててあげるからね」



最愛の彼女を、信頼している兄貴に取られる。
そして、自分よりも兄を選んだ彼女は、その兄に紙くずのように捨てられる。
こんなに面白いことはない。


・・・こんなに、残酷なことはない。


だから優しくしてあげるよ。
モモ。
俺を好きになるように。





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