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りんどう庵

ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


18.それぞれの夜

2010.03.24  *Edit 

駿はそわそわと携帯をいじりながら、今日何度目か分からないため息をついた。

「どうかした?」
章吾に声をかけられ、きつい視線を投げかける。自分が酷くイラついた表情をしているだろうことに気が付いて、駿は申し訳なさそうに弱く笑った。
駿の珍しくイラついた表情、その後の弱々しい笑顔で章吾はピンと来て、さっきとは少しだけ違う質問を投げかける。
「清水さんと何かあった?」
図星といった顔で、駿はもう一度弱々しく笑ったもののうまくいかず、笑うことは諦めてため息を漏らした。
「随分とやられちゃってるみたいだね」
「いや、たいしたことはないんだけどね・・・」
たいしたことないって顔じゃないだろう。
章吾は内心思ったものの、あえてそれは口にしないことにする。
多分、そんなことは言われなくても駿が一番分かっていることだろうから。
「いや、実はさ、来ないんだ」
駿は手の中の携帯を握り締める。
「ええ!?来ないってまさか・・・お前、ちゃんと避妊してなかったの!?」
とんでもないことを喚く章吾の口を掌で押さえると、駿は周りを伺う。数人の女子学生が眉をひそめてこちらを見ているのが分かった。
「おい・・・勘弁してくれよ。違うって。来ないのは連絡だよ、メール」
「ああ、何だ。メールの話か」
章吾はちょっと残念そうに笑った。
「何だよ、そのちょっと残念そうな顔」
「人の不幸は蜜の味ってね」
からからと笑う章吾の頭を、駿は思わずげんこつで殴っていた。
「いやあ、冗談だって。冗談。もう駿君たら、すぐに切れるんだからあ」
頭を押さえながらも、ふざけた口調でおどけて見せる。
思わず駿もつられて笑ってしまっていた。
章吾なりに、駿の気が少しでも紛れるようにとの優しさであることが駿にも分かって、心の中で感謝する。

「で?何、清水さんから連絡がないって、喧嘩でもした?」
一呼吸置いて、章吾がストレートに聞いてくる。さっきと違って真剣な顔つきだ。
「うん」手の中で携帯をいじりながら、駿はこの期に及んで言いずらそうにしている。
「ここ3日くらい連絡がないんだ。今までこんなことなかったからさ・・・」
「はあ?たった3日連絡がないだけでそのへこみよう!?」
だからこいつに話すのは躊躇したんだ・・・と、駿は章吾に話したことを早くも後悔していた。
けれど、章吾じゃなくても「たった3日連絡がない」ってだけの駿の悩みを、一蹴しないとは限らない。それが分かっていただけに、言いずらかったのだ。
そして「そんな悩み?」と一蹴されるたびに、自分の器の小ささを思い知らされるような気がしていた。
「はあ」と、大げさな章吾のため息が聞こえる。
「・・・駿さあ、神経質になりすぎなんじゃね?たった3日だろ?しかも今、実習中だろ?」
「何で知ってんの?」
「みなみに聞いた。・・・間違っても清水さんから聞いたわけじゃないから、変な勘違いすんじゃねーぞ」
章吾の言葉に、駿はぎくりとした顔をした。正直、桃佳が実習中だというのを知っている章吾さえも、疑わしく思えてしまったのだから。
「・・・はい、疑ってたね。お前バカ。ホントにバカ。普通俺まで疑うか?」
「ごめん。つい・・・どうも俺、疑心暗鬼になってるみたいだわ」
しょんぼりとする駿を、章吾としてもこれ以上責める気にはなれない。確かに疑われたことは面白くなかったものの、駿の桃佳に対する入れ込み様を知っているだけに、どこかで仕方ないとも思っていた。
「もういいよ。ま、とにかく座って話そう。で、何があったのさ」
立ち話をしているのも何だと思い、章吾は空いている席に座るように促す。昼休みで、教室にはあまり人がいないのが好都合だった。
「別に何もない。だから、連絡がないのが心配なんだ」
「そんなもんかな?」
「そんなもんだろ。喧嘩でもしてたら連絡の来ない理由も分かるけど、何もないのに連絡がないって何か変だよ」
駿の説明を聞いても、章吾はいまいち理解できなかったけれど、駿の真剣な眼差しで、彼が自分が思っている以上に不安になっていることだけはよく分かった。
「あのさあ、あれじゃない?駿がバイトなんか始めたから拗ねてるんじゃないの?」
「う〜ん」
それは駿としても考えていた。今までバイトをしようと思っているなんて一言も言ったことがなかったのに、突然にバイトを始めて会える時間が大幅に減ってしまったのだから。
「大体さ、場所が悪いんだよな。清水さん家と逆方向だろ。しかもバイト終わるのが夜の11時。それから清水さんの家に行こうと思ったら1時間はかかるだろうし・・・。彼女まじめそうだから、そんな時間に会いに行くわけにもいかなさそうだもんな。この際バイト辞めちゃったら?」
「そういうわけにはいかないって。兄貴が紹介してくれたところだから、兄貴の顔を潰すようなことはできないし、店の人もいい人ばっかりだし・・・」
「そっか。なら仕方ないな」
章吾は駿の兄、多希の顔を思い出していた。
駿とは似ていない綺麗な顔立ち。似ていない兄弟だったが、駿が兄をとても信頼していることは知っている。
「平日に会えないんなら、週末に約束して、ちゃんと清水さんのことを考えてるってことをアピールしたら?」
章吾の提案に、駿は頷く。確かに、平日はもうどうにもできないのだから、一緒にいられる時間をどうするか考えた方がよさそうだ。
「うん。確かに。そうだな、週末の約束でも取り付けてみるよ」
「そうしとけ。でも、駿」
「何?」
「束縛はほどほどにしておいた方がいいぞ。完全な放任は物足りないらしいけど、ぎつぎつの束縛は鬱陶しいらしいからな」
「そんなもんか?」
「そんなもんだろ」
さっきとは逆転した会話に、二人同時に笑い出す。
「ありがとう、章吾。話聞いてくれて」
「おう」









軽やかなメールの着信を告げる音に、桃佳はどきりとして顔を上げた。
多希は今日も夕食で使った食器を鼻歌交じりに洗っていて、桃佳の携帯が鳴ったことに気が付いていないようだった。
多希を伺いながら、そっと携帯を開ける。メールを確認すると駿からだった。
今日もメールを送ることができなかった。何を送っていいものか悩んでいるうちに、実習の時間になってしまったり、家に帰ってきてからはすぐに多希がやってきたりでメールを送れなかったのだ。
いや、もしも時間があったとしても、不安に彩られた駿からのメールになんと言って返していいのか分からず、メールを返すことなどできなかったのかもしれない。
また、不安げなメールだろうか・・・。
そう思うと、桃佳の心も曇った。
背中を向けている多希に更に背中を向けるようにして、そっとメールを確認する。
その内容は、今までの不安そうなものとは違っていた。

『清水、週末どっか出かけよう!!この間行きたいって言っていた、水族館なんてどう?』

桃佳の顔がぱっと輝く。
週末二人でどこかにいけると思うと、心が弾んだ。
勿論、多希とのことがあるので手放しには喜べない。どこかで罪悪感が付きまとう。
それでも二人でどこかに出かけられる、という気持ちは、桃佳をとてもわくわくとした幸せな気持ちにさせていた。
だから、食器を洗っていたはずの多希が、手を止めて桃佳の背中を見ていることなど気が付きもしなかった。

背中を向けて携帯をいじっている桃佳の顔を盗み見ようと、多希はそっと体をずらした。
その横顔は、多希が見たことのない輝くような笑顔だった。
その笑顔を見て、即座に駿から何らかのメールがあったんだという事だけは分かった。それもきっとあの嬉しそうな顔からすると、週末の約束でもしたのだろう。
ニコニコとしながらメールを打っている桃佳は、多希が近づく気配など少しも気が付いてはいない。
メールを打ち終え、送信されたのを確認すると、桃佳は急いで携帯を閉じた。その瞬間に後ろから力いっぱい抱きしめられる。
「・・・きゃ!!」
その力はすさまじくて、とても身動きが取れるようなものではない。身を捩ってみても、多希の力は緩むどころか更にきつくなっていく。
「多希さ・・・!!苦しい・・・」
余りの力に、桃佳は苦しそうに呻く。そんな声など一向に気にせず、多希は桃佳の耳元に唇を近づけた。
「駿から連絡・・・?嬉しそうだったけど、週末に約束でもした?」
その言葉にどきりとする。見られていたのだ。
「そ、そうですよ。だって、多希さん、週末は駿ちゃんと一緒にいても、いいって、言ったじゃないですか!!」
多希の腕から逃れようと、更に桃佳は身を捩る。それでも多希の力は緩まず、思わず後ろにいる多希の太ももを拳で殴った。
「いいって、言ったじゃないですか!!」
もう一度そう言う。
これが多希の言う対等なゲームであるのならば、桃佳が週末に駿と出かけるのは何らルール違反ではない。
それどころか、多希の提示した『駿とは別れない』と言う条件を満たすものでもある。
黙ったままで桃佳の体を拘束する多希に、「そういうゲームなんでしょ!!」と強く桃佳は迫った。

そうだよ。

と、多希ならば悪魔的に綺麗に笑って、拘束を解いてくれると思っていた。

そうじゃなきゃ面白くない。

とか言って、ゲームが動くのを面白がるに違いないと。
けれど桃佳の思いは裏切られ、もがいていた体をぐいと後ろに倒される。小さな悲鳴をあげ床に仰向けになった桃佳の体の上に多希が馬乗りになった。
両肩を押さえつけられ、またしても身動きが取れない。
「多希さん!!」
真上にある多希の顔を睨み付けた。その顔は逆光となり怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
何を考えているのか想像もつかなくて、桃佳は眉をひそめて「どうしたんですか?」と静かに問いかけた。
ふっと、両肩にかかる力が小さくなる。

解放される。

そう思って、小さく息を吐き桃佳も力を抜いた。
その瞬間。
覆いかぶさるように多希が桃佳に重なって、激しく唇を重ねてきた。
舌が桃佳の唇を割って進入し、その口内を犯していく。
何度も何度も舌を絡め吸われて、その激しさに呼吸ができずに桃佳の頭はくらくらとした。
唇が離れ、首筋をなぞって下へと降りていく。多希の手が、服の中に侵入してきた。
ぞくぞくとした感覚を堪えながら、やっとのことで多希の激しいキスから逃れた唇から言葉を搾り出す。
「き・・・さん・・・。多、希さん!!やめて!!何もしないルール、なんでしょ!?」
ぴくりと多希の動きが止まり、服の中に侵入してきた手もするすると抜かれていく。
すっと桃佳の体の上からどくと、多希は背中を向けた。
「・・・別に、何もしないよ。驚かせてやろうと思っただけ」
多希には似合わない、消え入りそうな声。
「多希さ・・・」
「帰るわ」
背中を向けたまま立ち上がると、多希は大股で歩いて桃佳の部屋を出て行ってしまった。
桃佳の部屋のドアが閉まる音のすぐ後に、隣の部屋からドアが開いて閉まる音が聞こえた。
「・・・何なのよ、もう」
そう言いながら、桃佳は自分の唇をごしごしと擦る。
「何なのよ、もう!!」
何度も何度も唇をごしごしと擦った。そうしないと、多希の感触に支配されてしまいそうで。
多希の感触を消すように、何度も何度も・・・。



多希は部屋に戻ると、缶ビールを開けて一気に飲み干した。
スプリングが軋むほどどかりとベットに腰を下ろす。
「何やってんだよ、俺は」
怒ったような口調で呟いて、手の中の缶をぐしゃりと握りつぶした。




ポケットの中で携帯が震える。
返却されたDVDを棚に戻しながら、駿は慌てて携帯をチェックした。
桃佳からのメールだと知って、バイト中ということも忘れてメールを開く。
『嬉しい!!水族館、楽しみにしているね!!』
そのメールを見た途端、「よっしゃ!!」と言ってガッツポーズをした。客の若い女性がびっくりしたように駿を見たので、早足でその場を立ち去る。
ずっと桃佳からメールが来なくて不安だった。
けれど章吾の言うように、自分の送っていた内容に、彼女がどう返していいのか分からなかっただけなのかもしれない。けれど、桃佳からOKのメールが来たのだから、もうどうだっていいような気さえしていた。
「よかった」
駿は呟いて、いっぱいに抱えたDVDをどんどん棚に仕舞っていった。

けれど駿は知らない。
この瞬間、信頼している兄と、最愛の彼女が、いったい何をしているのかなんて。



駿は、知らない。





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