りんどう庵

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りんどう庵

モトカレ!!(お試し版)


プロローグ

2012.02.10  *Edit 

「……芽衣(めい)」

 耳元で囁かれて、思わず首筋を仰け反らせる。

「芽衣」

 その声は、私の中を甘く駆け巡って鼓動を早くした。
 懐かしい……そう。とても懐かしい声。
 耳たぶを舐め上げられて、思わず声が漏れてしまう。自分でも驚くくらいのいやらしい声。
「……芽衣」

 再び耳元で囁かれた声は、私の腰の辺りを微弱な電気のように突き抜けていった。
 首筋から耳の形をなぞるように舐め上げられて、思わず甲高い声が漏れてしまう。

 でも、なんで?
 どうして?
 何がどうしてこんなことになっているの??

 アルコールでぐらぐらしている頭は完全にパニックで、拒絶の言葉も出てこない。勿論、「イヤ」と言って突き飛ばすって簡単なこともできない。
 ……唇が塞がれ、散々に唇を吸われ、口腔内を蹂躙され、その何とも言えない感覚に抵抗する力なんて湧いてくるはずもない。
 だって、あまりにも気持ちがよくて、ほかの事なんて考えられなくなってしまうから。

 真っ暗な部屋に、私と『誰か』の荒い息遣いと衣擦れの音だけが響いてる。
 遮光の分厚いカーテンに遮られて、月明かりさえも入ってこない。遮光なんかにしなければよかったって、心底思う。

「芽衣」

 そう囁く人の顔を見たいのに、暗闇の中、しかも酔っ払ってうねる視界の中でははっきりと見ることもできなくて悔しい。
 見たいのに。
 その顔を。
 確かめたいのに。
 あなただって。

 呼吸を奪い、唾液さえも奪い去ってしまうかのような激しいキスにぼんやりしていると、鎖骨の辺りをそっと撫でていた指先が、ゆっくりと胸の方にずらされる。

「……っ、ひゃっ!」

 最初から的確に先端の一番敏感なところを掠めるように触れられ、腰がビクンと跳ね上がってしまった。
 既にそこは下着の中で硬くなってしまっていて、服の上からでも簡単にその存在が分かるようになっているはず…… 恥ずかしくって頬がかあっと熱くなった。

 最初から何も抵抗なんてしていないのに、両腕は手首を押さえられ、頭の上で固定されている。
 そんな姿勢では身を捩ることもできなくって、与えられる刺激に顔を背けることくらいしかできない。触れられるたびに、腰がビクンと跳ね上がって、まるで両の胸を差し出すように仰け反ってしまうのが、更に私の羞恥心を煽る。
 けど、どうすることもできない自分に、更に羞恥心は膨れ上がる。

「ひゃ……ん、や、ヤダ……」

 そんなつもりもないのに、私の唇からもれだす声は、まるで誘っているみたいに甘ったるくて……
 荒くなる一方の呼吸は、熱くて堪らない。

 一番敏感な部分を中心に、『誰か』は私の胸を触れるか触れないかの微妙な力加減でそっと撫でる。
 きつく揉まれるよりも、その指先の感触がびりびりと体中を駆け巡って、何度も何度も嬌声を上げてしまう。
 恥ずかしくて堪らないのに、抵抗できない。

 ……私はこの感触を良く知っている。

「っ!!」

 胸を撫でていた指先が離れ、膝に触れた。
 ひらひらとした薄い生地のスカートが足にまとわりついて、それを避けながら少しずつ腿を上がってくる手。
 あともう少しで『誰か』の指がスカートの奥にある薄い布に触れようとした時、私ははっとして膝を曲げてその手の侵入を拒んだ。
 だって…… 言うまでもなくその薄い布で隠されている場所は、とんでもないことになっていて、触れられたが最後。私がどれだけ『誰か』に与えられた刺激に感じてしまったか、ばればれになってしまう。

 ――――誰かも分からないのに。
 ――――彼かどうかも確認できてないのに。

「ね、ねえっ! イヤッ。ねぇ……誰、な、の?」

 震える声をやっと喉から押し出す。
 声が震えると言ったって、怖いからじゃない。それは酔っているせいだからだろうか? それとも、もしかしてこの『誰か』が、彼かもしれないと思っているから?
 与えられた刺激に、ただ息が上がってしまっている。
 たったあれだけだったのに、体中がびりびりと痺れるくらいの快感。

「誰……なの?」

 暗がりと酔いでぼやける視界の中で、必死に吐息を感じるくらい側にいる相手をじっと見上げる。
 すると、拘束されていた手首は解かれ、重なるように私の体に跨っていた『誰か』はその体をずらした。そして聞こえる、長く深いため息。
 くしゃり、と聞こえたのは、髪の毛を掻き上げでもしたのだろうか?

「……マジかよ」

 吐き捨てるようにそう言った声は、やっぱり聞き覚えがあって。
 でも、本当に彼がここにいるんだとは信じがたくて。
 だから何も答えることができなかった。
 
「ちっ」
「え? はっ? ぎゃ、ぎゃああ!!」

 舌打ちが聞こえたかと思ったら、不意に体が宙に浮いて、驚いた私はとんでもなく色気のない声を出してしまう。

「ぎゃあ、ってなんだよ。ぎゃあって。うるせえ、暴れんな酔っ払い。落とすぞ」

 ……それは困る。
 何やら、『誰か』は私を抱えあげたままは階段を上っているみたいで、とてもじゃないけれど、今この状態で落とされたら相当痛い目を見る。
 だから私は、『誰か』にお姫様だっこをされたままの姿勢でじっとしていることにした。
 それからドアを開ける音が聞こえて、それから不意に体が投げ出された。

「ンぎゃっ!!」
「さっきから変な悲鳴上げてんじゃねえよ」

 呆れたような『誰か』の声。
 どうやらそこはベットの上だったらしくて、別にどこも痛くはない。そのまま頭まで布団をかけられる。

「誰かも分かってない奴を無理やり抱く気はない。
 ……でも、ま。次は俺が誰か分かった状態で楽しませてもらうことにするよ」

 じゃあな、と『誰か』が出ていった気配がする。
「待って!!」
 と、呼びとめたいのに、どうしても声が出なかった。
 呼びとめ、たかったのに……


 ………………

 ……




 薄い瞼を通してもはっきりと分かるほど強い日差しに焼かれ、芽衣は苦しげに「うぅ」と呻いた。
 喉はからから。頭は割れそうなほどにがんがんと痛む。
 ゆっくり開けた瞼の向こうで、暴力的なほどの陽射しが芽衣の視界を一瞬真っ白に塗り潰す。もう一度芽衣は「うぅっ」と呻いた。さっきよりも苦しげに。

 ぼんやりと見上げた天井は、どうやら自分の部屋ではなくて。けれど、どこか見覚えのある天井。
 じっと見つめ、やっとそこがどこだか理解する。

「えー……? なんで? ここ、お父さんの部屋じゃない……」

 やっと理解する。
 自分の部屋でなく、どうやら今は一緒に住んでいない父親の部屋であるらしいことを。
 自分の部屋は父の部屋の向かい側のはず。

「あちゃあ。酔っ払って間違っちゃったのかなあ」

 ため息をついて昨夜のことを思い出そうとするものの、芽衣は一向に昨夜の出来事をうまく思い出すことができない。思い出されるのは、ところどころの場面の断片だけ。
 どうやってここまで帰ってきたのかも、さっぱり分からない。
 昨日の結婚式に着ていったぴらぴらしたパーティードレスを着たままだということを考えれば、どうにか自力で家までたどり着いて、自分の部屋かどうかも確認できないまま眠り込んでしまったというところなんだろう。
 とにかく何も思い出せない以上、そうやって自分を納得させるしかなさそうだ。

 けれど、ひとつだけはっきりと思い出せることがある。

 芽衣はスカートの裾をぎゅっと握りしめ、腰をもじもじとさせた。
 言葉にしがたいような、ざわざわした何かが腰の奥の方で燻っている。

 それは……あまりにも生々しい夢。
『誰か』に唇を奪われ、体をまさぐられ、けれど少しも怖くなくて、それどころかひどく気持ちがよくって……
 彼かもしれないと思った。けれど、顔を確認することもできなかった。そんな夢。
 思い出すだけでも体の芯が熱くなってくるような気がして、あわてて自分の体を抱きしめる。

 どうしてあんな夢を見てしまったんだろうと、芽衣は思いを巡らせた。


 ――――そう、ちょうど十二時間ほど前に、芽衣の記憶は遡るのだった。


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