りんどう庵

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りんどう庵

モトカレ!!(お試し版)


三年目の再会 4

2012.02.10  *Edit 

「おおっ!! 芽衣ちゃん、いい飲みっぷりだね!!」

 芽衣の周りを取り囲んでいる男たちの間から、歓声が沸き起こる。
 その歓声の中、芽衣は一気飲みしたオレンジの味のする、甘いカクテルの入っていたグラスをテーブルの上に乱暴に置いた。

「次何か頼もうか?」
「……はい。お願いします」

 芽衣の返事に嬉しそうに、男がなにやらカクテルを注文してくれている。しばらくすると淡いピンク色のカクテルが芽衣の前に届き、彼女はまたしてもそのカクテルを一気に飲み干した。
 芽衣は乱暴にグラスをテーブルに叩きつけ、一気にアルコールを体に入れたせいでぐらりとする視界の中で彼と彼女を見る。
 その視界に映るは、橘櫂理(元カレ)と大島絹(保護者)。さっきまで一触即発の気配を纏っていた二人。それが今は怪しげに微笑み合いながら、お酒に強くない芽衣が見ても分かるほど強いお酒を酌み交わしている。
 一時はどうなる事かと思った。
 逆上した絹が、櫂理の襟首を締め上げた時には……本当に流血沙汰になると、全身から冷や汗が吹き出した。きっと絹に櫂理との過去がばれたに違いないのに、何がどうして、二人が仲良く飲んでいるのか芽衣にはさっぱりと理解できない。
 ただもう、いつまたさっきのように爆発するんじゃないかと気が気じゃなくて、アルコールでも摂取していないと落ち着かないのだ。

「いただきましゅ……」

 既にとろんとした瞳で、芽衣はまたしても運ばれてきたカクテルを口に運ぶ。
 甘い香りはするものの、もう何味なのか何風味なのかも判別できない。ふわふわとして、なんだか楽しくなってくる。
 そして、もしかしたら絹と櫂理は、芽衣のことなんてまったく関係なく、本当に仲良しになったのかもしれないという気にさえなってくる。
 そんなことを思いながら再び二人を見ると、睨み合いながらアルコールを無理やり流し込む二人が、微笑み合ってグラスを合わせているようにも見えてくる。おどろおどろしい気配さえ、草原の如き爽やかさだ。

 なあんだ。二人、仲良くなったんだ。よかった〜。

 うふふ、と思わず頬が緩む。ほっとして、またしても喉が渇いてきてしまう。

「おかわりぃ〜」

 空になったグラスを高々と掲げ、お代わりをねだる。……自分があまり飲めないこともすっかり忘れて。




 ぐらぐらする。
 ふわふわする。
 たのしー。

「私、ちょっとトイレに行ってきますっ」

 しなくてもいい宣言をして、芽衣は席を立つ。ぐらぐらのふわふわで、油断すると本気で天井が回る。
 けれど、過剰にアルコールを摂取した状態の芽衣には、それが楽しくてならない。
『しっかりしろ、自分!!』
 と、自分を律する自制心など、もう既に持ち合わせていない。

 芽衣は店内にひとつしかないお手洗いのドアを鼻歌交じりに開けた。
 ひとつしかないので、男女にも別れていないそこは、ドアを開けると洗面所に、もうひとつあるドアの先がお手洗いとなっている。
 後ろ手でバタンとドアを閉めると、洗面所は店内の騒音から切り離され、ほんの少しだけ芽衣も自分を取り戻す。アルコールのせいもあるものの、その場の雰囲気にも酔っていたようだ。……すぐ近くで、絹と櫂理が仲良く飲んでいるのをハラハラしながら見つめていたせいもあるのだろう。

「……なんか、疲れちゃったなあ」

 呟いて、芽衣は壁に寄り掛かって大きく息をついて目を閉じた。目を閉じると余計に周囲がぐらぐらと回り出して、かくんと膝から力が抜け落ちてしまった。

「っ、ひゃ!!」

 慣れない高いヒールが災いして、そのまま前につんのめって転びそうになる。このままではひざを強打する――――!!
 そう思ったと時、抱きかかえるようにして体が支えられた。

「大丈夫ですか?」
「……わ、あ、あの、ありがとうございます。……え?」

 洗面所とはいえ、ここはお手洗いの一角。なぜ人がいるのか。そう思い至るまでに数秒。
 あまりいい状況ではないんじゃないかと気がつくまでに、更に数秒。
 そして、この支えてくれているニンゲンが、誰かってことに気がつくまで……更に数秒。

「な、なな、な、なんでっ!! じゅ、順番、順番守ってください!!」

 脳内がパニックに陥り、訳のわからない道徳を必死に説く芽衣。支えてくれているニンゲンから離れようとする彼女の耳に、くくっと低い笑い声が届く。

「バカですねえ…… 鍵、開けっ放しにしている方が悪いんでしょう? それに、転びそうになっているところを助けてあげたんですから、お礼を言われてもいいくらいですよ?」
「お、お礼なら言ったわ!!」

 どうでもいいところで反論する芽衣の耳元で、またしても楽しげにくくっと笑い声が漏れる。その低い笑い声に、芽衣は全身が粟立つ。
 抱きかかえられるように支えられた体勢をなんとか立て直し、ぐらぐらする視線の焦点を必死に合わせる。視線の先にあるその顔は。

「か、櫂理……」

 その名前を出した途端に、心拍数は跳ね上がる。
 視線が絡んで、櫂理がふっと意地悪く微笑んだ。

「どうやら、思い出していただけたみたいですね」



 一気に三年前のことが芽衣の中に溢れだす。
 その声で、散々に攻め立てられたあの頃のことを。
 どんどん意地悪になっていく囁きに、涙交じりに懇願してしまったことも……

『芽衣』
 そう呼ぶ声が、どれだけ自分の中を熱くしていたのかも……



「櫂理」

 その名を口に出せば、酔いとは別に眩暈を起こしてしまいそうな自分を、芽衣は必死に堪えていた。

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