りんどう庵

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りんどう庵

モトカレ!!(お試し版)


三年目の再会 7

2012.02.10  *Edit 

「芽衣、芽衣」
「……ん、ん〜」

 家の鍵はハンドバックの中から難なく見つけ出すことができた。
 しかしながら、当の家主は相変わらず正体不明の状態。呼びかけに唸るのみ。

「まったく」

 櫂理は呟いて、芽衣のハイヒールを脱がせて家の中に運び込む。エリが一人暮らしだと言ってはいたものの、人の気配がないことにほっと息をつく。こんな状態を芽衣の親に見られるのは、櫂理にも芽衣にも都合が悪すぎる。
 だらんとしたままの芽衣を居間に運び込み、とりあえずカーペットの上に横たえる。すぐそばのキッチンで水を汲むと、櫂理は芽衣を抱き起こした。

「芽衣? 水飲むか?」

 そっとグラスを口につけたものの、芽衣は眉を寄せてそれを手でよけた。それから再び寝入ってしまう。
 やれやれと言ったように肩を竦め、櫂理はそのグラスをキッチンに戻した。
 芽衣は胎児のように体を丸めて、静かな寝息を立てていた。レースのカーテンしかしていない室内に差し込む月明かりに照らされ、ひらりとしたスカートから伸びる足や、つやつやした頬がほんのりと発光しているようにも見える。
 スカートは捲くれあがって今にも下着が見えそうだし、肩紐も肩からずり落ちてストラップレスのブラジャーが少し見えている。
 あまりにも無防備なその姿。襲ってくださいとでも言っているようにさえ見える。

 誰かに覗かれたらどうすんだよ……

 そんな考えが浮かんできて、櫂理はなんとなく腹立たしくなって乱暴に分厚い遮光のカーテンを引く。途端に室内は暗闇に支配され、芽衣の姿も櫂理の視界から消え去ってしまう。
 けれど目は数分で闇に慣れ、ぼんやりとしたシルエットだけが櫂理の目にも映る。
 見えていれば、誰かに見られるんじゃないかと心配になるものの、見えなければ見えないで、それはなんとなく面白くない。
 櫂理はそんな自分の気持ちを持て余しながら、腕を組んで眠る芽衣のシルエットに目を凝らす。けれど、どれだけ目を凝らしたところで、黒い一塊にしか見えない。

 なぜかイライラした。
 その理由は櫂理自身にもわからない。
 ただ、自分がそばにいることにも気づかずに、呑気に気持ちよさそうな寝息を立てていることに腹が立ったのか、それとも別の理由なのか……
 とにかく、ひどくイラついた。

 だから、無理矢理にでも自分をその視界に写してやろうと思ったのだ。
 さっきの披露宴のときにも同じことを考えていた。俺に気が付かないなんて、そんなこと許さない、と。それが当然だと。

「芽衣……」

 横たわる芽衣に近づき、その柔らかそうな体に覆いかぶさる。

「芽衣」

 その瞳が開くように、わざと強く呼びかけながら、耳朶を甘噛みする。――――そこが弱いことは、よく知っていた。途端にぶるりと震える体。微かに漏れる甘い息。
 自分でも何をしたいのか、櫂理自身にもよくわからない。傷つけないのか、喘がせたいのか。ただ、はっきり言えるのは、自分を見て欲しいと思った。その瞳に写して、『橘櫂理』がそばにいることを気付かせたかった。

 つ……、と首筋に舌先を這わせると、仰け反るからだ。そのまま耳を舐れば、たちまち呼吸は色付き、浅く早くなる。面白いくらいの反応。櫂理にはそれが心地いい。
 そのまま舌先をずらして、ぷっくりとした芽衣の唇をなぞる。拒絶することもなく、それどころか薄く唇は開きく。隙間から覗く赤い舌先はまるで櫂理を誘っているかのようだ。
 だから深く、呼吸を、唾液さえもを奪うようなキスをする。夢中で味わう。びりびりとしたその感触に、一瞬で三年前に月日は戻るようで。柔らかく、甘い芽衣を味わった。

「ふ……ぁ」

 合わせた唇から漏れる切なげな声に唇を離すと、ほんの少し眉を寄せて、上目遣いに見上げてくる芽衣と目が合った。……ような気がした。暗闇の中では、そこまではっきりとはしない。
 ただ、これできっと自分だとわかってもらえたと思った。
 再び唇を合わせ、鎖骨から徐々に指先をじらすように胸元に下ろしていく。服の上からでもはっきりわかるほど先端は尖っていて、言葉よりもはっきりと芽衣の体の状況を知らせてくれる。

『欲しがっている』

 そう思うと、自然と口角が上がる。
 尖った先端を中心にそっと指先でなぞると、まるで両の胸を「もっと」とでも言うかのように差し出してくる。ひっきりなしに漏れてくる喘ぎは、懐かしさとともにじりじりとした疼きを運んできた。

「芽衣」

 呼びかけて、膝頭を撫で、腿を撫で上げていく。もう少しで薄い布に隠された場所に指が届こうかと言うとき、抵抗など一切しなかったからだが、急に閉じられてしまう。
 そしてぶつけられた言葉は。

「ね、ねえっ! イヤッ。ねぇ……誰、な、の?」

 ――――脱力した。
 それはもう、盛大に。
 当然、自分だとわかっているに違いないとそう思って疑いもしなかった。それが、まったく気が付いていなかったとは……

「マジ……かよ」

 櫂理は芽衣から離れると、大きくため息をついて髪の毛をかき上げる。
 エリに煽られたことは関係なく、本当にこのまま襲ってやろうかなと、そんな気になっていたのだけれど、それも一瞬でぶっ飛んだ。
 あまりにも自分が馬鹿らしくて、腹も立たない。

「ぎゃあ」とか「ひゃあ」とか変な叫び声をあげる酔っ払いを抱え上げ、眠れそうなスペースのある部屋に運び込む。たまたま開けたドアの先にベットが見えて、そこに放り投げると、またしても変な叫び声を上げる芽衣に、櫂理は思わずくっと笑っていた。

 変わらない。
 そう、確かに芽衣はこういう色気のない奴だったかもしれない。
 それに、とことん天然な彼女は、いつだって大事なことにはなかなか気付いてくれなくて…… そのくせ、逃げ足だけは野生動物並みなのだ。

 櫂理の中で、彼にも説明のしようのない気持ちがふつふつと沸いてくる。

「誰かも分かってない奴を無理やり抱く気はない。
 ……でも、ま。次は俺が誰か分かった状態で楽しませてもらうことにするよ」

 見えないとわかっていながら、櫂理はひらひらと手を振って部屋を出た。口元には、不敵な笑み。

 そう、わかっていないのならば、次は俺だとわかった状態で欲しがらせてやればいいだけのこと。
 自分から強請らせるだけだ。
 櫂理が欲しいと。あなたが欲しいと。お願いだからと。
 潤む瞳で見上げさせてやればいい。



 そのためには……

 そんなことを考えながら、櫂理は芽衣のハンドバックから出した鍵で外から彼女の家に鍵をかける。防犯はしっかりしなければならない。

 そう、俺が味わう前に誰かに横取りされてたまるか。

 鍵をかけた後、その鍵を郵便受けから玄関に投げ込む。
 きっと芽衣はその鍵を見て、自分が鍵を開けた後に玄関に落としたと思うだろう。きっと、今日のことは夢だとでも思っているのだろうから。

 けれどそれでいい。
 お楽しみはこれからだから。

 ほくそ笑んで、櫂理は鼻歌混じりに夜の闇の中に消えていった。



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