りんどう庵

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りんどう庵

モトカレ!!(お試し版)


番外編:犬も食わない

2012.02.22  *Edit 

「芽衣、助けてよ!!」
「絹ちゃんっ!! やだ、久しぶりっ!! 元気だった? ねえ、元気だった?」
 絹が慌てた様子で谷村家にやってきたのは、彼女が身を引くように谷村家から去って、二週間後の土曜日の事だ。
 慣れた様子で谷村家の居間に上がり込んできた絹に、芽衣は嬉しさのあまり目を潤ませて飛びつく。
「絹ちゃんったらこの二週間、全然連絡もくれないんだもん。私、ずっと絹ちゃんがどうしているのか気になっていたの」
 ぐすん、と鼻を鳴らして絹の体を目一杯抱きしめるメイを、彼女はここにやってきた理由も忘れ、感動に胸を膨らませながらそっと抱きしめ返す。
「メイ……元気にしてた? あの変態アクマに酷い事、されてない?」
「誰が変態アクマです。酷いことなんてしてませんよ。というか、メイ、離れなさい。女同士で暑苦しい」
 メイと同様に居間にいて、事の成り行きを見守っていた櫂理が、ひょいとメイの首根っこを捕まえるようにして、感動の再会を喜び合う二人を引きはがした。
「くぅっ、相変わらず邪魔くさい上に空気の読めない男ね!! ここは黙って見守るのが、懐の広い男でしょうが!!」
「懐が狭くて結構。メイに凶暴な性格が移ったら困るんで、隔離しているだけです」
「何ですって!! この変態ドSのケダモノが!!」
「櫂理っ!! も、もう、絹ちゃんも……」
 バチバチと火花を散らして罵倒し合う二人の間に、メイが慌てた様子で飛び込む。
 そして絹に一番忘れてはいけない事を尋ねた。
「絹ちゃん、そういえばさっき『助けて』って言っていたみたいだけど、一体どうしたっていうの?」
 その言葉に、絹は弾かれたようにはっとする。
 そう、どうしてもメイに助けてもらいたくて、橘櫂理には会いたくなかったものの、意を決してここにやってきたのだから。
「そうよっ!! そうなの、メイ。お願いだから助けて頂戴!!」
 真剣な顔でメイの両肩をがしっと掴むと、メイが驚いたように目を丸くする。
「わ、私に何かできるの?」
「こんな恥ずかしい事、メイにしか相談できないのよ……」
 絹は苦々しく口元を歪めた。
 そして、つい昨夜かかってきた電話の事を思い返す。

『絹? 元気?』
 それはエリからの電話だった。珍しい相手からの電話に、絹は驚きながらもにこやかに答える。
 ……それが、絹をこの上なく困らせる結果となろうとは思わずに。
「エリ。あんたから電話してくるなんて、珍しいじゃない。アタシは元気よ。エリも元気?」
『ええ、もちろん。ところで絹。明日、ちょっと飲まない?』
 それが飲み会の誘いだと思った絹は、喜んでその誘いを受けた。
「飲み会ね? 大丈夫よ。明日なら空いているから。エリの家? それともどこかに飲みに行く?」
 メイの家を出てからすっかり気落ちしていた絹は、外に飲みに出かけてもいなかった。だから、いい気分転換になるだろうと、その誘いを快く受けたのだ……けれど。
『飲みに出ましょう? お買い得物件、そろえておいたから楽しみにしててね』
「お買い得物件?」
 エリの言葉に絹は首を傾げる。すると、携帯の向こうで、エリがくすっと笑った気配がした。
『……そう、いい物件ばっかりよ。あんたのために、条件のいいイケメンをそろえてあげたんだから、楽しみにしていてね』
「……な!! ちょっと、待ってよ!! アタシ、行かないんだからね!!」
『あらあ……さっきまで乗り気だったくせに、無責任ねえ。こっちはセッティングしているんだから、今更ダメなんて言わせないわよ』
 脅すような……というよりも、完全に脅しとしか思えないエリの言葉に、さすがの絹も震えあがる。
 実力行使では負けない自信はある絹だったものの、とても口ではエリに勝てない。
「待ちなさいよっ、エ、エリが勝手にセッティングしたんだから、アタシに責任はないはずよ!!」
『はーん、そう言う事を言うの? さっきは大丈夫だって断言したくせに? 私、あの一言を聞いたから、お買い得物件たちに『明日よろしくお願いします』って、一斉メール送ったんだから。どうしてくれんの? え? 責任、取らずに逃げるなんて、大人としてって言うか、人間としておかしいとは思わない? ん?』
「そ、それは……ぐ、ぐう」
 エリが本当に絹の言葉を聞いてから一斉メールを送ったかは定かではなかったものの、確かに大丈夫だと言ってしまった手前、やはり後ろめたい。
 と、いうか、『人間としておかしい』だなんて言われたままなんて悔しい。
 ――――そんな性格を知ってのエリの作戦だった事は、もちろん絹は知る由もなく、まんまとその掌の上で踊らされてしまうのだ。もうこれは、高校の頃から変わっていないのだけど。
『絹。あんたって一度引き受けた事を、簡単に覆せる奴だったのねえ。見損なったわ』
 これが決定打となる。
「分かったわよ!! 行けばいいんでしょう!? アタシは責任感の強い女よ!! 一度大丈夫って言ったんだから、大丈夫に決まっているでしょう!!」
 くす。
 っと、携帯の向こうでエリが笑ったのを、やはり絹は気が付かなかった。

「……ってことで、今夜その飲み会に参加しなくちゃいけないのよ」
「合コン!? 合コンだよね、絹ちゃん。初めてじゃない? うわあ、楽しみ。私も連れて行って欲しいなあ」
 はしゃぎながら、とんでもない事を口にしたメイの後ろで、櫂理が「うぅんっ」と咳払いする。そんな事をされなくても、絹としてはメイをそんな危険な場所に連れていく気はさらさらないが。
「連れて行けるわけないでしょう? 合コンってあんた意味分かってるの?」
「うーん……絹ちゃんよりは場数こなしているから、分かっているつもりだけど?」
「……そんなに参加した事があるんですか?」
「え? え、っといや、その」
 じろっとメイを睨みつける櫂理のこめかみがひくひくと痙攣している。
 一緒に暮らした期間は短いものの、絹はそれが彼が不機嫌な時のサインだと知っていた。まあ、本人は自分にそんな癖があるとは分かっていないよなので、絶対に教えてやるつもりはないが。
 それにしても、こんなことくらいで嫉妬しているらしい橘櫂理は、ちょっとは変わったのかもしれないと感心する。
「橘櫂理、男の嫉妬は見苦しいわ。いいじゃない。あんたと別れていた時の話なんだから」
 そう助け船を出せば、「別に嫉妬なんてしていませんよ」と、櫂理はやはりこめかみをひくひくさせながらそっぽを向いた。
 なんだかちょっと可愛くなったかもね、こいつも。
 そう思って、つい自分の置かれた境遇も忘れて笑ってしまった。
「で、絹ちゃん、私は何を手伝ったらいいの?」
「あ、ああ、そうだった。実はアタシ、合コンなんて初めてで……どうしていいのか分からなくって。ねえ、どうしたらいい? 黙っていてもいい? どうしよう」
「うーん……じゃあ、シュミレーション、してみる? 丁度櫂理もいるし、手伝ってもらおうよ」
「ええ!?」
「はあ!?」
 絹と櫂理は同時に拒絶を込めた奇声を発したものの、
「ね? そうしよう絹ちゃん。ね? お願い、櫂理」
 と、可愛らしく首を傾げるメイにあっさりと敗北したのだった。

「じゃあ、櫂理は合コンの相手の役ってことで、絹ちゃんに話しかけてね」
 ダイニングテーブルに向かい合わせに座り、絹と櫂理はお互いぶすっとしたまま相手を見やった。
「はい、じゃあ、櫂理からどうぞっ!!」
 全く空気を読んでいないメイだけが、妙に元気だ。
「……絹さんは、普段お休みの日はどんなふうに過ごしているんですか」
「昼過ぎまで寝てる」
「……」
「……」
「じゃあ、趣味は」
「男を投げ飛ばす事」
「……」
「……」
「メイ、ダメです。続きません」
「はあ……」
 さすがにこれにはメイも頭を抱えた。これでは、会話にもならない。
「絹ちゃん……もうちょっと何かないの?」
「何もないわよ。だって、アタシ、正直に答えてるだけだもの」
 絹としては、他になんと言っていいのかも分からない。道場で男と組み手をするのは慣れていても、普通の会話なんて慣れていないのだから。
「うーん……ねえ櫂理、あのね、ちょっと口説く感じでいってみようか。ちょっと変わるかも」
「はあ? 口説くって……」
「何となくでいいから、お願い。だって、これじゃあなんの練習にもならないじゃない。口説く感じなら、もしかしたら話しがもう少し弾むかもしれないし……ね?」
 再びメイが小首を傾げて櫂理を見上げれば、彼は大きなため息をつきつつ、それでも渋々了承した。
「……分かりましたよ」
「よかった!! じゃあ、絹ちゃん、今度こそもう少しどうにかしてみようね。はい、じゃあ櫂理どうぞ」
 メイに促され、櫂理は再び大きくため息をついて、真っ直ぐに絹を見つめた。
「……絹さん、よかったら電話番号を教えてくれませんか?」
「な、なんでよ」
 櫂理は眼鏡を奥の目をすうっと細め、おもむろにテーブルの上に置いてある絹の手をそっと握った。
「なっ!!」
「このまま絹さんと別れてしまうなんて、もったいないと思うんです。俺にとって、今夜絹さんと出会えた事は、とてもも大きな意味があるんです」
 口説かれるシチュエーションだと分かっていても、絹は櫂理から出る甘いセリフに口をパクパクさせた。握られた手を振り払うのも忘れるくらいに。
「だから、またあなたとは会いたいんです。今度は二人きりで……今夜限りだなんて、そんなの俺には我慢できそうもありません」
 テーブルの上、握られていた手が持ち上げられ、指先に櫂理の唇が落とされる……いや、落したフリ。唇は触れていない。
 けれど、組み手以外で男の人に触れられ慣れていない絹は、真っ赤になってその手を振りほどいた。
 相手が櫂理だと、変態ドSのケダモノだと分かっていても、心臓がバクバクする。
「め、メイ……!!」
 こいつ、思い切り投げ飛ばしてもいい!?
 と、聞こうと思ったものの、その言葉は口から飛び出すことなく、喉元で鎮火された。
 鬼の形相で櫂理の後ろに立っていたメイが、思い切りげんこつで彼の頭を殴りつけたから……
「――――ってーっ!! 何すんだ!! メイ!!」
 痛みに丁寧語を遣うのも忘れて振り返った櫂理は、メイの顔を見て……固まった。
「何すんだ、ですって? 櫂理さん、随分とまあ、女慣れしているのねぇ。そうやっていつも女の人をだまくらかしてきたの?」
「め、メイ? お前が、口説けって言ったんだろ?」
「口説けって言ったけど……でも、あんまりにも生々しいのよ!! いつも言ってないと、あんな恥ずかしいセリフ、言えるわけないじゃない!!」
「い、いや、ちょっと待てって……」
「待たない!! このキザ男!!」
 絹が投げる必要もないくらい、櫂理はメイにぼこぼこと殴られた。絹から見てもちょっと気の毒になるくらいだ。
「ちょ、メイ。その辺にしておいたら……?」
「ううん、いいの!! 櫂理が、櫂理が悪いんだからーーーー!!」
 ぼかぼかと、小気味いい音が聞こえる。
 そして絹は、何だかバカらしくなってきた。
 何やってるんだろ、私。
 今夜の事なんて、どうにでもなるか。
 と、諦めよりも呆れに近い感情が湧き上がってくる。
 そして、
 なんだかメイ、楽しそう。
 とか、櫂理がきいたらどこを見てそう判断するんですか!! と、突っ込んできそうな事を思いつつ、ぶっと吹き出してしまった。
「メイ、ありがと。アタシ帰るから、ごゆっくりどうぞ」
「ごめんね、絹ちゃん!! 櫂理のバカーーーー!!」
 まだぼかすかと殴られたままの櫂理を横目で見て、なんだかんだと言いつつも、すっかり甘い空気を見せつけられてしまった。
 犬も食わない、甘い空気でお腹がいっぱいだ。

 

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~ Comment ~

NoTitle 

まさに犬も食わない話ですねw
見ているだけでお腹いっぱいになりそうです(*^_^*)
でも、こういったお話って好きです。
この後、絹は合コンで何人の男は投げ飛ばしたんでしょうね?w

少し気になったのですが、同じ文章がいくつか混ざっているようなのですが……?
  • #241 桜葉久遠 
  • URL 
  • 2012.02/22 21:07分 

Re: 桜葉久遠さま。 

ああああああああ、久遠さまーーーー!!!!
ご指摘ありがとうございましたーーー!!!
急いで修正してきました。
どうしたんでしょう?
ワードの文章をコピーして引っ張ってきているので、その過程で何か変なことしたんでしょうね(-_-;)
教えていただいて、本当に助かりました。

そしてそして、お腹一杯になっていただけたようでよかったです♪
本当は、甘い誘い文句を口にする櫂理を絹が投げ飛ばすことも考えたのですが、その上芽衣に責められるとちょっと可哀相かな、という事でこんな展開になりました。
合コンの席では……ご想像にお任せします^^
  • #242 沢上澪羽 
  • URL 
  • 2012.02/22 21:40分 

犬も喰わない 

拝読致しました。
何か微笑ましい感じがココロ暖まりますね。
段々と、俺様キャラが崩れていく櫂理も
子羊メイが、強くなっていくのも、とても面白くて。
色々、続編があれば嬉しく思います。
楽しみにしております。

Re: りんりん様。 

りんりん様、感想ありがとうございます^^
微笑ましいと言っていただけて、とても嬉しいです♪
そうなんです、書いているうちにだんだん櫂理のキャラが崩壊(?)してきました。
最近書いている櫂理は、どこか毒気が抜けているものが多いので、そのうちドSの俺様櫂理を書きたいと思っています。
まだもう少しネタがありますので、またお時間のある時にでも覗きに来てくださったら嬉しいです。
  • #244 沢上澪羽 
  • URL 
  • 2012.02/23 22:58分 

承認待ちコメント 

このコメントは管理者の承認待ちです
  • #274  
  •  
  • 2012.06/15 21:53分 

Re: ありる様。 

ありる様、お久しぶりです!!

返信が遅れてしまいまして、本当に本当に申し訳ございませんでした。
ありる様のこと、もちろん覚えてますよ^^
本屋さんで手に取っていただけたのですね。
本当に嬉しいです。
実は、『モトカレ!!』が私の人生初コメディーでしたので、「面白い」と言っていただけるのは、純粋に嬉しいです。
時間はかかるかともいますが、またこちらの方でも連載をちょこちょこ開始したいと思っておりますので、お時間がある時にでも、また来ていただけたら幸いです。
  • #277 沢上澪羽 
  • URL 
  • 2012.10/23 22:30分 
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