りんどう庵

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

りんどう庵

だから、抱きしめて


売り言葉に買い言葉 4

2012.04.28  *Edit 

 店からさほど遠くない槙村のマンションに連れ込まれ、玄関の扉が閉まった瞬間、美織は彼にお姫様だっこをされてほいほいと運ばれてしまった。
 運ばれた先は彼の寝室。
 ぎょっとする暇もなく、美織はダブルベッドにぽいと放り投げられ、あっという間に押し倒されていた。

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくださいっ」
「何で? こうなること分かっててついてきたんだろ?」
「う……っ」

 それはそうだ。
 確かにこうなるかなあ、とは思ってはいた。
 でも逃げ出すのも格好悪くて、とりあえずついてきたのだ。それに……もしも槙村の言う「俺と一晩過ごす」が、もしかして、万が一、夜を徹して飲み明かそうだったなら……
 何かされると身構えていた美織は、ただの思い上がりの強い女になってしまう。
 だから素直に腕を引かれるまま、ついてきてしまった。
 ぐいぐい腕を引っ張られるようにして、連れてこられた先は槙村の自宅マンション。職員住宅でなかったことだけが唯一の救いだ。
 いや、そうじゃなくて、ここまでついてきてしまったのがそもそもやっぱり間違いで。
 さっさと「実は男慣れしていません。男性経験も恋愛経験も殆どないんです。だから勘弁してください」と真実を告白してしまえば、槙村の寝室でいきなり押し倒されるような目には遭わなかったのかもしれない。
 ……いやいやいや、いつもの意地悪な槙村を思えば、かえって面白がって美織を抱きたがったかもしれない。
 ということは、多分、今更これまでの自分の発言を撤回したところで槙村を止められないだろう。更に本当の事を言うのも、こんな状況に陥っているというのに癪だ。
 でも。

「でっ、でもこんなのまずいですっ!! やっぱりまずいですってば!!」
「なにが?」
 槙村は美織の首筋にかじりついていた顔を上げ、口元ににやりと笑みを浮かべて真っ直ぐに見詰めてくる。
「そ、その……他の看護師にばれたら、私、袋叩きにされます」
「内緒にしたらいい」
「そっ、それに、先生だって彼女の一人や二人いるんでしょう!?」
「うーん、今はいない。この間までは三人いたけどね」
「……」

 三人いたとかさらっと告げられ、美織は眩暈を覚えた。

「で? もう言い訳は見つからない?」
「!?」
「もうダメだよ。ここまで来て逃げ出そうだなんて、そんな都合のいい話があるはずないだろ? 何を言っても、どんなに抵抗しても、やめる気ないから」
「な、な、な……こっ、この鬼畜!! どうして私なの!? 先生なら、他にほいほいついてくる女がたくさんいるでしょ!?」
「何とでも。確かに誘えばついてくる女はいるかもしれないけど、それってあんまり面白くないだろ? 俺は……お前の……いや、なんでもない」
「面白い、面白くないで人を襲うなあ!!」

 手足をばたつかせているつもりなのだけれど、両腕はしっかり手首を掴まれて縫いつけられているし、両足はがっちりと槙村の足で押さえつけられているので、殆ど身動きできていない。

「私は面白くないから、襲わなくていい!!」
「言いたいことはそれだけ?」
「ん……!! んんっ」

 悪あがきの言葉は、槙村の唇に塞がれた。
 唇を強く押し当てられ、柔らかく槙村の舌が美織の口内に差し込まれる。くまなく探るように動き回り、執拗なまでに美織の舌を追いかけ、絡められ、吸われる。
 まるでじっくり味わい、食べられているかのようなキスに、美織は息が上がってしまった。
 思えば、すごく久しぶりのキス。
 でも、そんなふうに浮かんだ思考も、既に呼吸さえ許さないようなキスで欠乏していく酸素のように、どんどん消耗される。
 やっと唇が解放された時には、呼吸をするのに精いっぱいで、憎まれ口を叩く気力もなかった。

「ん、……はあっ」
「俺と一晩過ごすの、別に平気なんだろ? それともやっぱり怖いからやめてって、俺に頼んでみる?」

 にやりと笑って見せる槙村の瞳の中に、意地悪な光を見つけて、薄れていた気力はむくむくと蘇った。そしていつもように意地を張る美織に戻る。
 絶対に頼んだりしない。
 バカにされてたまるもんですか!!
 なんて。
 だから、つい、つい挑発に乗ってしまった。

「……バカにしないで」
「て、ことは平気だって解釈してもいいんだね?」
「べ、別に平気です」
「ふーん……そっか。じゃあ、遠慮なくいただきます」

 そろりと美織の頬を撫でていた槙村は、にっこり微笑むと美織に覆いかぶさってきた。
 額に、頬に、唇に、雨のようにキスが降ってくる。徐々に唇は美織の唇から頬へ。頬から首筋へと移動し、耳たぶを咥え込まれた。
 耳たぶを咥え、その輪郭を舌先でゆっくりなぞられ、思わず細く高い声が口から洩れる。

「……ひ、あっ」
「耳……感じるの?」
「ちが……っ、あっ、やあぁ」

 ぴちゃぴちゃとわざと音を立てるように耳を舐られ、その感覚に美織の背中は意図せず弓なりに反ってしまう。
 そんなつもりじゃないのに、勝手に体がぴくぴくと跳ね上がる。呼吸が苦しい。
 耳が弱いなんて、美織は自分でも知らなかった。
 再び熱っぽい口づけが落ちてきて、槙村はキスをしながら慣れた手つきで美織のブラウスのボタンを外していく。
 少しずつ露わになる胸元に槙村の唇が触れる。それだけで、皮膚がびりっと感電するようだ。

「……っ!!」

 声を出さないように、必死に奥歯を噛みしめ、美織はきつく目を閉じた。
 キスだけじゃない。もう何年もこうして誰かと肌を触れ合わせることもなかった。どんなふうに反応していいのかも分からないし、だからと言って槙村相手に素直に声を出すのも恥ずかしい。
 だから、必死に漏れ出しそうな声を耐えた。

 ブラウスのボタンが全て外され、前を開かれる。
 見られていると思うと、いたたまれない。

「……色、白いんだね。きっと綺麗に痕が付くんだろうな」
「え? きゃ」

 胸元に、痛いくらいにきつく吸いつかれる。数秒そうして、槙村は満足げに顔を上げた。

「ほら、綺麗に痕が付いた。……何だか所有印みたいだね」
「所有物になんて、なる気、ないですけど。それに、数日もしたら消えます」
「じゃあ、消えないように毎日つけるっていうのはどう?」
「遠慮します」
「あはは、つれないね」

 槙村の指先はくるくると美織の髪を巻きつけて弄ぶと、首筋から胸の谷間にすっと降りてくる。

「だったら、そうして欲しいって、川崎が自分からお願いしたくなるようにするってのはどうだろう?」
「え?」

 想像もしなかった自信満々なセリフに、美織は眉をしかめた。

「どういう意味?」
「体に教え込んであげるってことだよ」

 にっこり。
 爽やかな、けれど企みを隠すこともないような笑顔で槙村は微笑んだ。
 疑問への恥ずかしすぎる返答に、美織が金魚のように口をパクパクさせている隙に、槙村はブラジャーのワイヤー部分に指先を掛けて引き上げると、彼女の胸を露わにした。
 美織が身動きするよりも早く、柔らかな胸の頂に吸いつく。

「……夜はまだ長いからね」

 どうしてこんなことになっちゃったんだろう……
 往生際悪く、美織は泣きたい気持ちでそんな事を考えていた。



スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(2)

~ Comment ~

新連載、拝読しました! 

お疲れ様です。
久々に訪問したら、新連載がアップされてて、
嬉しかったです!
何度もブログは除いてたのですが、
まさかそんなに病気続きだったとは、
びっくりです。
ご自愛下さいね。
とっても、いい感じの主人公ですね。
続きがとっても楽しみです!!
  • #269 りんりん 
  • URL 
  • 2012.05/02 00:34分 

Re: りんりん様 

りんりん様、こんにちはー!!
お久しぶりです、御来訪とっても嬉しいです^^
そうなんですよ。
もう病気続きで、へたっておりました(^_^;)
やっと自分がよくなったと思ったら、ちびーずが水疱瘡……(泣)
またしても更新から遠ざかっておりました。
新連載、それほど長くならない予定ですので、お付き合いいただけたら幸いです。
不定期な上に亀更新ですが、よろしくお願いします。
  • #271 沢上澪羽 
  • URL 
  • 2012.05/06 21:52分 
 管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。