りんどう庵

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りんどう庵

だから、抱きしめて


売り言葉に買い言葉 5

2012.12.31  *Edit 

「い、やぁ……っ、も、お、やめ……っ」
「なにが? 平気だったんじゃないの?」
「へい、き……だけどっ、けど……!!」
「平気なら別にいいだろ」
「あっ、ひゃ……!!」

 いつの間にか上半身は裸にされていた。槙村もいつの間にか美織と同じように裸になっている。
 肌を重ね、さっきから執拗に胸を悪戯され、美織はもう息も絶え絶えだった。
 最後にこんなふうに誰かと抱き合ったのがいつのことか、もう思い出せないくらいに月日が経っている。その最後の記憶には、こんなふうに乱れた自分はいない。
 こんな、肌が火照って、汗が滲んで、腰の奥がぎゅっと疼くような、こんな淫らな感覚は……
 硬くした舌先で、胸の中心を弾かれるたび、自分のものではないような甘い声が漏れてしまう。柔らかく、かと思ったら乱暴に刺激を与えてくる槙村に、美織は完全に翻弄されていた。

「……っ!! あ、ふっ」

 槙村はいやらしい音をわざと立てて、吸いついていた胸の先端から唇を離す。その刺激で、美織の背中はわなないた。
 呼吸が熱い。
 胸が苦しい。
 慣れない刺激を与えられ続けて、頭の中は霞がかかったようにぼんやりしている。
 美織は両手両足をシーツの上に力なく投げ出して、荒い呼吸を繰り返す。抵抗していないのは、最後まで「平気だ」という意地を張り続けているせいではなく、もう、抵抗する気力さえ奪われてしまったから。
 顎を持ち上げられ、槙村に唇を奪われても、黙って受け入れる。
 ちゅ、と下唇を吸われ、またしても体が勝手に反応してしまう。
 唇が触れ合うほど近くで見つめられ、僅かに残った気力を振り絞って、美織は眉をしかめて睨み返した。

「本当に大丈夫? これからが本番なのに……」

 これからが本番……そうか、忘れていた。
 とか、冷静に考えている暇などなかった。
 そのあとはもう、自分の口から洩れる甘い嬌声に、美織は耳を塞ぎたいほどだった。それくらい、さっきからずっと喘がされている。

「意外と、いい声出すんだね」
「ひゃ……っ、ん、や、やぁ……ぁあ、あ、ああ!!」

 足首を掴んで大きく足を持ち上げられ、槙村にお腹の奥の方までぐんと抉られる。
 ぐっと奥まで槙村自身が突き上げるたび、微かな痛みと、言葉にできない熱さを感じる。内側からドロドロに溶かされるような感覚に、抗うすべもなく引き摺られる。

「……っ、締めすぎ。力抜いて」
「……んな、こと、言われたって……できなっ!! ああっ!!」

 上から見下ろしてくる槙村の顔が、苦しそうに歪む。
 ちょっと切ないような、ちょっと情けないような、美織の見たこともない顔。
 こんな顔もするんだ。
 そんなふうにふと思った瞬間に、さっきよりも激しく突き上げられる。

「やっ!! ちょ……あ、やぁ……ああっ、あ、あ、んああ!!」

 止められない嬌声に、美織と槙村の間から洩れる水音が重なる。
 繋がっているところを中心に、火が付いたように熱くなっていく体。何かがせり上がってくるような未知の感覚に、美織はシーツを握りしめた。
 がつがつと揺すられ、一層奥に突き立てられたかと思うと、そのまま槙村は美織の肩に額をつけるようにして項垂れた。
 しばらく美織も槙村もそのままの格好で、荒い呼吸を繰り返す。
 先に動いたのは槙村の方だった。
 ぴたりと肌と肌を重ねたまま、槙村が手を伸ばして美織の熱い頬に触れてくる。その動作は、いつもの意地悪な態度が嘘のように優しい。

「……悪い」
 いつも自信に満ち溢れている槙村が、困ったような、申し訳なさそうな顔で微笑む。やはりそれも見た事のない顔。
「……なに、が?」
 まだぼんやりしたまま、美織は彼にされるまま頬を撫でさせていた。なんだか、こうされていると眠くなってくる。
「思った以上によかったから、一人でイッた」

 ――――そんな事、別にどうでもいいし……!!

 真っ直ぐに見詰められてそんな事を言われ、動揺してしまう。
 さっきまで自分が槙村と何をしていたのか、はっきりと思い知らされたようで、あまりの恥ずかしさに頬を撫でる彼の手を乱暴に払って顔をそむけた。

「怒ってる?」
「べ、別に……!!」

 怒っているのとは違う。
 経緯はどうあれ、これはもう同意の上でのセックスだったのだから、怒るのはお門違いだ。ただ、とにかく恥ずかしくて、いたたまれない。
 一刻も早く槙村から離れて服を着たいのに、ぴたりと覆いかぶさるように密着した彼の体は、離れてくれる気配はない。
 しかも顔をそむけた美織の態度をどうとらえたのか、にっこりと微笑みながら顔を覗き込んでくる。
 ――――しかも、わけのわからない言葉も添えて。

「いや、本当に悪かったと思ってるよ。大丈夫。ちゃんと次は川崎の事いかせてあげるから」
「………………は?」
「心配ないって、俺、回復早いから」

 意味が、分からない。
 いや、分かる。分かるんだけど、分からない。
 ……って、待て!!

「いいです。結構です。本当にもう十分なので、遠慮いたします」

 ぶんぶんと真顔で首を横に振って見せても、槙村はにっこりと微笑みを崩さない。

「ほ、本当にもう結構ですからっ」

 体を退かしてくれるのを待っている場合ではなさそうだ。このままではまたいいように翻弄されてしまう。
 槙村の体を押し退けて逃げ出そうと思ったのに、逆に肩を押さえつけられる。思った以上に強い力で、ぐっとベッドに沈められた。

「心配しなくてもまだまだ夜は長いんだから」
「も、もう、終わりで結構です!!」
「……逃がさないって、言ったはずだけど」
「知らない!! 聞いてない!! 覚えてない!!」
「……だったら、思い出させてあげるよ」

 それからは嵐。
 さっきよりも激しく翻弄され、目の前が真っ白になる瞬間を二度ほど迎えた。
 槙村が自分に飽きてさっさと眠ってくれることを願いながら、その一方で濃密な時間に溺れる。
 望み通り槙村が眠ってしまった時には、美織もまた深い眠りに落ちてしまっていた。触れあう素肌の感覚が、悔しいけれど心地よくて。
 誰かの体温が、こんなにも眠りを誘うものだなんて、美織は今まで知ることもなかった。

「……ん」

 自分の唸り声で目が覚めた時には、外はうっすらと明るくなっていた。
 自分の置かれていた状況を上手く思い出すことができず、寝ぼけたように目ゆっくり瞬かせ、寝返りを打つ。
 そして視界に入ってきた裸の背中に、思わず大きな声を出してしまいそうになって、慌てて両手で口を塞ぐ。そして、一瞬で思い出す――――昨夜の濃すぎる時間を。
 顔が熱くなり、心臓が一気に騒ぎ出す。
 それと同時に猛烈な後悔が美織を襲った。
 軽率に槙村と関係を持ってしまった自分も許せなかったものの、それ以上に、翻弄され流され、少なくとも槙村から与えられる快感に溺れてしまった自分が何よりも許せない。
 背中を向けている槙村はぐっすり眠っていて、一向に起きる様子はない。
 美織はそっとベッドから抜け出すと、床に散らばった衣類を急いで身につける。パンストは伝線していて履けそうもない。けれどそれをこの部屋に残していく気にはなれなくて、ぐちゃぐちゃに丸めてバッグの中に突っ込む。
 身支度を整えて、もう一度槙村を振り返る。
 やはり起きる気配のない槙村を一瞥し、美織逃げるようにしてその部屋を立ち去った。

 まだ夜が明けたばかりの街を、美織は自分の部屋へと向かう。
 早朝の空気はひんやりしていて、スカートから伸びる生足が妙にすうすうと寒い。
 妙な心細さを美織は感じた。
 それはきっと、パンストを履いていないせいだと決めつけて、美織は俯きながら静かな街に足音を響かせた。
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  • #291  
  •  
  • 2013.01/04 00:38分 

Re: りんりん様。 

りんりん様、明けましておめでとうございます!!

わあ、すっかりこのセリフの似合う時期を過ぎてしまいました……(>ω<、)
申し訳ありません!!

「だから~」の最新話読んでいただけたのですね。
ありがとうございます~ヾ(●´▽`●)ノ彡
そして、お待たせいたしました(^_^;)
楽しんでいただけたようで何よりです。
楽しみで嬉しいだなんて、そのお言葉の方が、私にとってはお年玉です!!
年末年始、なにかと忙しく、仕事も休みなしですが、次話もあと数日で公開できそうです。
またお時間のある時にでも覗きに来て下さいね~。
本当に、こうやってコメントいただけるのが一番嬉しいです。

どうぞ今年もよろしくお願いします!!
後ほどりんりんさんのブログにもお邪魔しまーす!!
  • #293 沢上澪羽 
  • URL 
  • 2013.01/07 23:53分 
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