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ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


41.多希×楓

2010.03.24  *Edit 

「楓!!お姉ちゃん行ってくるから、くれぐれも多希さんに迷惑かけないようにね!」
「うぃ~」
まるで酔っ払いの返事のように、楓は寝ぼけまなこで桃佳を見送った。
どうやら昨日の長旅がこたえたのか、楓は再び落ちるように眠り込んでしまった。

「楓。いつまで寝てんの?」
「う~ん・・・」
「時間はちゃんと言っておいたはずだけど?」
「う~ん・・・ん!?」
姉、桃佳のものではない声。驚いて目を開けると、そこには雑誌から飛び出してきたかのような端正な顔。思わず楓は「ひゃあ!!」とおかしな声をあげて飛び起きた。
「寝ぼけてんの?」
その端正な顔の持ち主、多希は首をかしげて笑っている。
「お、おじさん、何で姉ちゃんの部屋にいるの?」
「昨日10時には迎えに来るって言ったはずだけど?」
「いや・・・そうじゃなくて、どうやって部屋の中に入ったのかって聞いてんの!」
「ん~」多希はどう答えたものか思案する。合鍵を持っているなんて、どう考えてもかなりのシスコンの楓には、刺激が強そうだ。
「開いてたよ、鍵。無用心だよね。それよりも、ほら支度して」
誤魔化すように急かすと、楓は目を丸くする。
「え?本当に出かけるの?」
「それとも、一日中部屋の中で過ごしたい?」
「ううん!!」
子供らしい笑顔を浮かべて、楓はベットから飛び起きると、急いで支度を始めた。
桃佳や楓の実家はどちらかというとかなり田舎で、彼から見ると姉の住むこの街はかなり都会に見える。だから本当は遊びに行きたくてうずうずしていたのだ。
例えそれが、姉との関係がよく分からない綺麗な男の人とだとしても、好奇心のほうが上回ってしまう。
それに姉との関わりを見て、それほど悪い人ではなさそうだと言うことを、楓も何となく感じていた。


楓の支度が終わるのをまって、二人は桃佳の部屋をあとにした。
とりあえず、朝食と昼食を兼ねて楓の希望でハンバーガーを食べる。ファーストフードのお店を後にして、多希と楓は彼の車に乗り込む。楓は少しだけ遠慮して、後部座席に座った。
「さあ、次はどこに行きたい?」
多希がエンジンをかけながら訊ねる。
「じゃあ、ゲームセンター!!」
楓の子供らしい表情に、多希はにこりと笑う。それに気づいて、昨日散々食って掛かったことを思い出して楓は少しだけ赤くなる。
駐車場から車を出し、交通量の多い道路に出る。しっかりと前を見据える多希の横顔を、楓はじっと見た。
「なあ、おじさん」
「ん?」おじさん呼ばわりは全く気にしていないように、多希が応える。
「・・・本当は、おじさんと姉ちゃん、どんな関係なの?おじさんは姉ちゃんの・・・その、彼氏?」
多希はバックミラー越しに楓を伺う。ミラー越しに目が合って、楓の方が目を逸らした。
「彼氏なの?」
「お隣さんだよ。お姉ちゃんがそう言ってただろ?」
ほっと息をつくような気配を、多希は背後に感じた気がした。
楓自身、『お隣さん』と言う言葉を心底信じたわけではない。それでも、多希から『彼氏だよ』と聞かされなくてほっとしたのだった。
小さな頃から母親のように接してくれた桃佳。楓にとっては、『姉』以上の存在だ。自分がシスコンだということもよく分かっている。桃佳に彼氏がいてはいけないとは言わないが、できれば誰かのものになっているとは思いたくはなかった。
「じゃあ、もしかして、おじさん姉ちゃんに片思いとか?」
楓は調子に乗って、面白そうに身を乗り出す。
「う~ん」多希は細い顎に手を置く。それから横目で楓を見て微笑んだ。「モモのことは好きだよ。楓とライバルだね」
「な!!!!なんだよ、それ!!」
楓は赤い頬を膨らませて、腕組をしてどっかりと後部座席に座りなおす。
その様子がおかしくて、多希は肩を揺らして笑う。
「ほら、楓、着いたよ」
笑いながら、駐車場へと車を滑り込ませた。

ゲームセンターに着くと、楓は目をきらきらさせて飛び込んでいく。
楓の街には大きなゲームセンターはなく、電車で一時間ほど行かないとならないのだと言う。小学生ではそんなに行く事もできず、相当嬉しいらしい。
「ちょっと遊んでくる!!」
と言うと、楓はあっという間に姿を消した。
普段来ない場所という点では多希も同じで、珍しそうに中を見回す。考えてみれば、高校のときにも大学のときにもこういう場所に殆ど来たことはない。
学生時代と名のつく時期は、早く社会人として自立したくて勉強と、その後の生活のためにと思って、貯金のためにバイトに明け暮れていた。
その頃自分は他に何をしていたんだろうと思い出そうとしたが、記憶には何も引っかかってこなかった。随分と寂しい学生時代を過ごしたものだと、多希はひとりで苦笑した。
ふと、中を見回っていると、一台のクレーンゲームが目に止まる。
中にある小さな人形を見て、多希は思わずぷっと吹き出した。
そこには、桃をかたどった可愛らしいマスコットが大量に詰まっていた。桃の形をした顔に、くりくりとした大きな目がついていて、体にはひらひらした服をまとい、なぜか背中に羽がついている。
妙にぽやんとしたその表情は、桃佳によく似ていると多希は思った。
「よし」
多希はそう言うと、財布からお金を取り出すと、クレーンゲームに投入した。
かなりの数の『桃人形』が中でひしめき合っているのに、多希の操るクレーンは、どれひとつとしてすくい上げることができない。
慎重に狙いを定めて、クレーンを下ろす。『桃人形』は一瞬浮かんで、すぐに落ちてしまう。財布の中にはもう小銭がなくて、多希は両替をすると、桃人形のクレーンゲームに戻ってきた。
再度お金を投入してゲームを始める。
桃人形は多希を笑うように、一瞬浮かんでは落ちることの繰り返しだ。まるで、自由にならない桃佳のようで、多希はほんの少しイラつく。
本当は、もっと上手に桃佳の気持ちを手玉に取ることができると思っていた。けれど桃佳の気持ちは、このクレーンゲームのようにうまく操作できなくて、かえって多希のほうが翻弄される。それは多希にじりじりするような焦燥感を与えた。
多希の中でゆらりと何かが揺らめき、ゲームを操作する手を止める。
「あ~あ。おじさんはやっぱ下手だな」
背後から生意気な色を含む声が聞こえて多希は、はっとする。さっき多希の中を揺らめいた何かは、すっと鳴りを潜めた。
「まあ、これは取りづらいよ。あ、でも、そこにあるやつなら、角度もいいし取れるかも」
そう言いながら楓はひとつの人形を指差す。
「ねえ、やってみたら?」
「・・・うん」
多希はダメもとでクレーンを操作する。
「ほら、そこ、もうちょっと!で、はい!そこでクレーンを下ろす!!」
楓の声にあわせて、多希がクレーンを操作する。クレーンは動きを止め、ゆっくりと人形に向かって降りていく。その様子を、多希と楓は息を呑んで見守った。
ゆっくりとした動きで降りたクレーンは、桃人形をつかんで持ち上げる。うまく着ている服にひっかっかったようで、多希があれほどやっても持ち上がらなかった人形は、あっさりと持ち上がり移動してくる。
「やった!!」
楓が嬉しそうにガッツポーズした。
クレーンから離れ、ストンと小さな音を立てて取り出し口に落ちてきた桃人形を、楓が取り出して多希に差し出す。
「ほら、取れたじゃん。おじさん。・・・あれ?」
楓は手の中の人形をまじまじと見つめる。それからぷっと吹き出した。
「これ、なんか姉ちゃんに似てる」
そう言って、もう一度多希に差し出した。多希はびっくりしたようにぼんやりとしている。・・・実は、クレーンゲームで景品を取れたのは、初めてのことだったから。
「ほら、おじさん。おじさんのだよ」
楓は多希の手をとって、人形をその手に握らせる。多希は手の中の人形を見つめ、それからふわりと微笑んだ。
「・・・ありがとう、楓。楓のおかげだね」
その優しげで柔らかい笑顔に、楓は一瞬魅了され、ごくりと息を飲んだ。
「べ、別に、俺は何もしてないよ。取ったのはおじさんだろ」
わざとぷいと顔をそらせて、そっけなく言う。その楓の目の前に、桃人形が差し出された。
「はい。これ、楓のおかげで取れたから、楓にあげるよ」
「いいよ・・・」多希を見上げて、にやりと笑う。「おじさんそれ、もしかして姉ちゃんに見せたくて頑張って取ろうとしてたんじゃないの?」
「・・・」
多希は楓に指摘されて言葉を失う。
確かに桃佳に似ていると思ったから、この人形を取ろうと思った。もしかしたら、桃佳にこの人形を見せたかったのかもしれない。
考えもしないうちに、桃佳の喜ぶ顔がみたくて・・・?
「だからさ」楓が桃人形多希の手に押し戻す。「おじさんがその人形、姉ちゃんに渡してやったらいいんじゃないの?」
そう言うと、最初にここに来たときのように、走ってどこかへ行ってしまった。
多希は桃人形を見つめる。

自分は桃佳の喜ぶ顔が見たかったんだろうか?
これを桃佳に見せたかったんだろうか?
二人の関係は、ただのゲームなのに?
ゲームが終わったら、この関係も終わるのに?

「おじさ~~ん!!こっちで対戦ゲームしよう!!」
大きな車をかたどったゲーム機の陰から、楓が顔を出して多希を呼んだ。
はっとして、多希はポケットの中に桃人形を押し込む。
そして、自分の中に疑問も一緒に押し込んだ。

「おじさん!!対戦しよう」
ハンドルを握った楓が不適に笑う。「なんかおじさん鈍そうだから、俺、負ける気がしない」
楓の言葉に、多希は不満そうに片方の眉を跳ね上げる。
「言うね。こっちは本物の車を運転してるんだ。たかがゲームだろ?小学生になんか負けるわけがないだろ」
「じゃ、勝負しようぜ」
「いいよ。じゃあ・・・」多希がにやりと不敵に笑う。「景品はお姉ちゃんね」
「・・・な!!・・・ま、いいよ」
多希に負けないくらいの生意気な笑顔を楓が見せると、画面の中でチェッカーフラッグが振られ、二人は画面を見つめてハンドルを握る。
小学生になんて負けるはずがない。
・・・はずだった。
けれど、多希の操る赤いレーシングカーは、楓の操る青のレーシングカーにどんどん差をつけられる。
コーナリングも鮮やかに、楓の車は一度も多希を前に出すことなくゴールした。
「やったー!!」
満面の笑みでガッツポーズをする楓とは対照的に、あまりの結果にさすがの多希も頭を抱える。
「ってことで、おじさん。姉ちゃんはまだまだおじさんにはあげられないよ」
「・・・分かったよ」
多希はしぶしぶ返事をする。勿論、約束するつもりはないけれど。
そんな多希の思いが伝わったかのように、楓はくるりと振り返って釘を刺す。
「男同士の勝負、だからね!!」
上目遣いにじっと多希を見上げる顔は、やはり桃佳によく似ていて、多希は思わず微笑んで頷いてしまった。
「よし!!じゃあ、おじさん、次はプリクラ撮ろう!」
「プ、プリクラ?」
「そうそう。行くよ~」
楓は多希の腕をとって引っ張っていく。
困ったような顔をしながらも、多希の楓を見る目は優しいものだった。




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