りんどう庵

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

りんどう庵

ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


47.雨に包まれて……

2010.03.25  *Edit 


痛いほどに手首をつかまれて、桃佳は引き摺られるようにして歩いた。
いつもよりもヒールの高いミュールのせいで、今にも転びそうになっている。
肩から下げた鞄の中で、ちりん、と小さな鈴の音がまるで抗議する様な音を立てた。
それは、昨日桃佳が帰ってくる前に駅で買ってきた『ご当地キューピー』のストラップだ。名産でもある湯飲みに入っているようなそのデザインが可愛らしくて、駿とおそろいの物を持っていなかった桃佳は、自分と彼の分を買ったのだった。既にひとつが桃佳の携帯に、以前水族館で駿がプレゼントしてくれたストラップと共に揺れている。
けれど、そのおそろいのストラップを渡そうと思っていた相手は、さっきから黙ったままで、乱暴に桃佳の手を引いて大股で歩いている。

以前にもこんなことがあった・・・。
転びそうになりながらも、ふと桃佳はそんなことを考える。
そう、水族館に行った日、酔っ払った桃佳は黙ったままの駿に、今と同じように手を引かれて歩いた。
確かにあの夜と今は、手を引かれて歩いているいるという点では同じ。けれど、あの夜の駿は黙っていても背中が優しかった。今はその背中は、ひどくとげとげしい。

「どこに行くの?」
「どうするつもりなの?」
「痛いよ」

言いたいことはいくつでもあるのに、とげとげしいその背中は全てを拒絶しているようで、彼女はただ転ばないようについて行くしかなかった。

暫くすると、昼間に歩くには恥ずかしいような、ラブホテルの並ぶ一角に入り込んだ。
こんな明るいうちから!?
と、桃佳は一気に汗が出てくるのを感じた。けれど、もしもここにくるのが目的だったとしたら、いつも待ち合わせている駅とは別の駅を、駿が指定してきたのにも頷ける。
いつもと違う駅で待ち合わせし、会ってから話しをすることもなく、こうして手を引かれて歩いてきた。・・・まるで、最初からここにくることが目的だったかのように。
その思いを確信に変えるように、駿はすっと一軒のホテルの中に桃佳の手を引いたままで入っていく。適当に部屋を選び、何かに急かされているかのように部屋へと急ぐ。
部屋に着き、部屋の中に入っても、駿は桃佳の手を離すことはなかった。ただ、やっと立ち止まることができたので、彼女は早くなった呼吸を整えるように大きく息をついた。
駿はまだ彼女に背中を向けたまま、黙っている。
一言も声をかけられることもなく、こんなところまで連れてこられて、桃佳はひどく戸惑っていた。こんな駿は初めてで、どう接していいのか、どう声をかけていいのか全く分からない。
それでも沈黙が呼吸さえも苦しくするようで、必死にかける言葉を探す。
「・・・あ、の、駿ちゃん。バイトの時間は大丈夫なの?」
部屋に備え付けられた時計をちらりと見る。いつもだったら、「そろそろバイトに行かなきゃ」と駿が苦笑いする時間になろうとしていた。
「バイトなんて・・・」
「・・・え?」
低く、くぐもるような声に、桃佳は一瞬どきりとした。こんな声を出す駿も初めてだったから。
「バイトなんて、どうでもいいだろ!!」
そう言うと駿は、つかんだままだった桃佳の手を引っ張り、まるで放り投げるようにしてダブルサイズのベットに彼女の体を倒した。
桃佳は小さな悲鳴を上げて、ベットに体を横たえる格好になる。体勢を戻す間もなく、その体の上に駿が覆いかぶさってくる。
「駿ちゃん・・・!?」
驚いて声を出したものの、その唇は乱暴に塞がれて、それ以上の言葉を紡ぐことができない。
桃佳の両方の手首をつかみ、抵抗できないようにして、駿は彼女の唇を犯すように貪る。
いつもの優しい、愛しむようなキスではない、ただ、荒々しいだけのキス。呼吸さえも許さないように、駿はその唇を犯し続ける。

自分の行為で、苦しげに顔を歪める桃佳を見ながらも、駿は自分を止めることができないでいた。
自分の中にたまって、こびり付いてしまったどろどろとした感情を、ぶつけることをやめられなかった。彼女がどうなってしまってもいい。そんな乱暴な気持ちさえも、見て見ない振りをしていた。
唇を離し、細い首に吸い付く。
「あ!!」
痛みに、桃佳が思わず声をあげる。その首には、赤い花びらのような痕がはっきりとついていた。
駿は自分の証をもっとつけたくて、胸元や肩に吸い付き、赤い花びらを残していく。
それからスカートを捲り上げて、小さな薄い下着を剥ぎ取って指を滑り込ませながら、自分もズボンと下着を脱ぐ。
されるがままになりながらも、桃佳は初めて駿に対して恐怖心を抱いた。
けれど、一切の抵抗をしない。
もしかしたら、駿がこんなふうになってしまったのは自分のせいかも知れないと思ったから。駿の行為を受け入れることで、少しでも駿がいつもの彼に戻ってくれることを願っていたから。

桃佳のそこは全く濡れていないことを知っていながら、既に大きくなってしまっている自分自身を突き立てる。
「あ・・・!!ぐ、う・・・!!」
あまりの痛みに、彼女の目には涙が浮かんだ。一切濡れていないところに突き立てられた痛みは、初めてのときの痛みとよく似ていた。
桃佳はシーツをつかんで、引き裂かれるような痛みに耐えた。
駿自身も痛みを感じていた。それでも自分を止められず、激しく腰を動かし始める。
「う・・・!!」
快感とはまったく別の声が桃佳から漏れる。眉間に深い皺ができ、我慢するようにぎゅっと目を閉じると、瞳にたまっていた涙がぽろりとこぼれ落ちた。
横を向いてふと目をあけると、ベットの横の大きな鏡に、服を脱がされることもなく挿入されている自分が写っていて、桃佳はあまりの悲しさに目を閉じる。
繰り返し与えられるのは痛みばかりで、彼女は少しの優しさも、愛情もこのセックスに感じることはできなかった。

そんなことには構わないように、駿の行為は止まらない。
桃佳の足を持ち上げて、更に深く突きたてようと腰を打ち付けてくる。
そのスピードと、息使いがどんどんと早くなってくる。
桃佳とは逆に快感を感じ始めた駿の体は、もっと奥を目指すように激しさを増していく。
「・・・う・・・ああ、もう、俺・・・」
まさか!!
と桃佳が思った時にはもう遅かった。
駿は彼女の腰をしっかりと抱え込んで、一番深いところで自分自身の欲望の塊を放出したのだった。
桃佳は目を見開いて、自分の腰を抱え込んだまま小さく痙攣する恋人を見つめた。
避妊も何もしていない状態で、全てを自分の体の中に放出されたことが信じられなくて、体中から全ての力が抜けていく。
全てを桃佳の体の中に出し切った駿は、肩で呼吸しながら、彼女の体から離れて背中を向けた。
桃佳は少しも動かずに、ぼんやりと天井を眺めていた。
無理やり挿入されていたために、体の中心が引き裂かれたようにずきずきと傷む。けれど、駿が避妊もしないで欲望のままに自分の中に出してしまったことは、それ以上に彼女の心に苦痛を与えていた。

「どうして・・・」
ベットの端に腰掛けて背中を向けている駿が、小さな声で呟く。
桃佳は視線だけを彼の背中に向けた。さっきまでのとげとげしさは感じられなかったものの、もう桃佳にはその背中から何かを感じ取ることはできそうもない。
「どうして、嫌なら嫌だって言わないんだよ!!」
振り返った駿は、怒ったような、それでいて悲しそうな視線を桃佳に向ける。
「こんなふうにされるのは嫌だって、中出しされた事だって、腹が立ったなら怒ればいいんだ!!」
大きな声を出され、桃佳はよろよろと起き上がる。
「どうしていつも、何を考えているのか言ってくれないんだ。どうして一番そばにいるはずなのに、少しも清水のことが分からないんだよ・・・」
駿は悔しそうに顔を歪める。
そんなことを言いながらも、駿は自分でよく分かっている。
もしも桃佳が「やめて」と言ったならば、怒りと悲しさでやはり同じように無理やり抱いてしまっていただろうことも。何かが変わっていたとしても、今日の自分は結局桃佳に同じことをしてしまっていただろうことも。
けれど、それを分かっていても、駿は桃佳を責めずにはいられなかった。
桃佳を責めるたびに、駿自身もぼろぼろに傷ついていくのに。
ふっと、駿は自嘲気味に笑う。
「・・・お前、俺の何なの?何でも俺の言う通り?」
桃佳は白くなるほど唇を噛み締める。自分の体が震えているのが分かった。
怒りで。
「別に相手は俺じゃなくてもいいんじゃないの?」

ぼすん
駿の頭に柔らかなものがぶつかって落ちる。
枕が駿に向かって投げられたのだった。驚いて駿は桃佳のほうを見る。
そこには見たこともないような、怒りと悲しみをこらえるような桃佳の顔があった。
「・・・ばか!!」
もうひとつの枕も勢いよく飛んでくる。駿は両腕でそれをよける。
「相手が俺じゃなくてもいい・・・?」彼に向けられる桃佳の視線には、いつものような穏やかさの欠片もない。
「相手が私じゃなくてもよかったのは、駿ちゃんの方じゃない!!今日、セックスしてた相手が私だってこと、駿ちゃんは分かってたの!?別に私とじゃなくったって、セックスできれば誰でもよかったんじゃないの!!」
駿が驚いた表情で自分を見ている。
けれど、桃佳も自分を止められなかった。今日のことがあまりにもショックで、冷静になれそうもなかった。
駿を睨みつけ、唯一体から取られた下着を身に着け、ベットを降りると鞄を拾い上げた。そのときに、鞄の奥の方でちりんと鈴の音が響く。

おそろいだよ、一緒に持っていようね。

そう言って、微笑み合えると思っていた。それなのに、こんなことになってしまった。
じわりと涙が盛り上がってくる。
そうなってしまうと、桃佳にはもう涙の止め方が分からない。ただ、盛り上がっては落ちていく涙をそのままに、鞄に手を突っ込むと、駅の名前が入った紙袋を駿に投げつける。
ストラップの入った紙袋は、すぐに失速して駿にぶつかることもなくその足元に落下した。
ちりん。
悲しげな鈴の音を響かせて。

桃佳は駿を見ることもなく、逃げるようにしてホテルの部屋を後にした。

駿は足元の紙袋を拾い上げる。
その中には、桃佳が好きそうな可愛らしいストラップ。駿はそのストラップをぐっと握り締める。
『別に私とじゃなくったって、セックスできれば誰でもよかったんじゃないの!!』
桃佳の言葉が耳の奥で蘇り、きつく目を閉じる。
そう思われても仕方ない。そう思われるだけのことをしてしまった。汚い欲望と、黒い感情のはけ口にしてしまった・・・。
「清水!!」
無くしたくはないものを無くしてしまったかもしれない恐怖心に、駿は慌てて部屋を飛び出していった。



ぽつり、ぽつり。
頬に涙とは違う冷たい雫が流れ、桃佳は空を見上げる。
重たそうな雨雲から細い雨の糸が落ち、彼女の上に降り注いできた。はじめ静かに降っていた雨は、すぐに音を立て始める。
雨の雫は、ぼんやり空を見上げる桃佳の顔や髪を濡らしていく。
ゆっくり桃佳は歩きはじめる。
もっと雨が降ればいいと思った。もっと自分を濡らしてくれたらいいと。

全て洗い流してくれるくらいに。


「清水!!」
遠くで誰かが自分を呼んできるような気がしたものの、桃佳は振り返らない。
その声に振り返るよりも、今はこの雨に包まれていたかったから。


「清水・・・」
その名を呼んでも、振り返る人はいない。
雨で煙る街に目を細めても、求める人を、駿は見つけることができなかった。

スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~

 管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。