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りんどう庵

ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


48.苦しい思い

2010.03.25  *Edit 

雨に濡れたまま、桃佳はぼんやりと歩いた。
雨に濡れていたくて歩いているうちに、一駅分歩いてしまい、二人が待ち合わせをした駅で桃佳を持っていた駿とは、とうとう会うことはなかった。

家までこのまま歩こうか・・・。
桃佳はそう思ったものの、自宅までは相当遠い。ずぶ濡れの桃佳はタクシーを止めることもできず、全身から雨粒を滴らせたままで電車に乗る。
ずぶ濡れの桃佳はかなり人目を引いたものの、そんなことは彼女にはどうでもいい。
「・・・寒い」
冷房のきいた車内は、彼女の外側からも内側からも冷たく冷やしていくようだ。自分を抱くように腕を組んでみたものの、少しも温かかくはならなかった。
冷え切った体で電車を降り、再び雨粒に体を晒せば、これ以上冷たくなることはないだろうと思われた体は、どんどん体温を失っていく。
ひどく寒かったものの、それはどこか桃佳の心を落ち着かせた。冷たくなった体は、もうさっきの駿の感触を思い出さなくなっていたから。




多希は時計をちらりと見た。
もう20時になろうとしている。どう考えても、こんな時間まで桃佳が帰ってこないなんてことはおかしい。しかも何の連絡もない。
先日楓の一件があって、桃佳は多希の携帯番号を知っている。何かあったら、桃佳のことだ。連絡をしてこないはずがない。
多希はカーテンをめくって外を見る。すっかり夜の気配に支配された街には、音もなく雨が降っている。
「何か、あったか・・・?」
多希は落ち着かない気持ちで爪を噛む。桃佳に自分の携帯番号を教えたものの、桃佳の番号は聞いてはいなかったのだ。今更ながら、桃佳の番号も聞いておくべきだったと、ひどく後悔した。
その時、ガチャリとドアの開く音がする。
「モモ!?」
多希は弾かれたように居間のドアを開ける。そしてそこに立つ桃佳を見て、ひどく驚く。
多希は眉をひそめて、全身ずぶ濡れになり、同じように驚いたように自分を見つめる桃佳を見た。
「多希さん・・・」
正直多希の顔を見るまで、桃佳の頭の中には彼の存在など全くと言っていいほどなかった。
多希の顔を見て、今日が平日で、いつもだったらとっくに一緒にご飯を食べている時間だったということに気がつく。それから、自分が頭からつま先までびしょ濡れなことを思い出し、急にうろたえた。
「あ、あの。すいません。すぐに食事の用意しますから」
おろおろと濡れて乱れた髪を耳にかけ、桃佳は急いで部屋の中に入った。彼女が歩いた場所は、濡れた足跡が残っているほどだ。
部屋の中に入ったものの、どうしていいのか分からなくなり、桃佳は軽いパニックに陥る。どうにも思考回路がうまく回ってくれない。
「モモ」
腕をつかまれて、はっと身を硬くする。
「どうしたの?まずはその濡れた体をどうにかしないと・・・」
「あ、あ、そう、ですよね」
そうは答えたものの、彼女はやはりどうしていいのか分からずに立ち尽くす。
多希は怪訝な顔をして、バスタオルと取りに浴室へと向かった。別にバスタオルの在り処を知ってい訳ではない。ただ、バスタオルならば、浴室のそばにあるだろうと思っただけ。そしてそれは浴室のそばにきちんとかけてあった。
多希はそれをつかむと、桃佳の頭からバスタオルをかけて頭をごしごしと拭き始めた。
「・・・すいません」
桃佳は多希に頭を拭かれながら、小さな声で呟く。
「・・・何かあった?」
彼女が自分でタオルをつかんだので、多希は手を離してタオルで自分の体を拭き始めた桃佳を見詰める。
一瞬彼女の指先がピクリと強張ったのを多希は見た。
何かがあったのは間違いなさそうだったが、桃佳はその問いに答えようとはしない。その様子に、多希の心はなぜかざわりと波打った。
そして見てしまったのだ。
桃佳の首筋に咲く、赤い花びらを・・・。

最初は怪我でもしたのかと、その花びらを見つめる。けれどそれがすぐに誰かにつけられたものだと気がつく。
そう、間違いなく駿が桃佳を抱いたときにつけた痕だと・・・。

さっき多希の中で起こった波が、一気に大きくなる。
桃佳は今まで駿と一緒にいたということが、彼の中で確信に変わる。この週末、桃佳が実家に帰っていたことで、二人が一緒にいることを多希は想像すらしていなかった。そして、駿の存在すら忘れかけていたのだ。
その薄れかかっていた駿の存在が急に膨らみ、彼女の首筋に刻まれた痕のように血色を帯びる。
今まで桃佳は駿と一緒にいた。
そして、彼女は駿に抱かれてきた・・・。
多希の中の大きな波は、彼を呑み込み、何かを壊した。

「今まで、駿と一緒だったわけか」
呟かれた声に、桃佳は今度はびくりと体を強張らせる。
「・・・それで、お楽しみだったってことだね」
低い声に、桃佳はタオルの隙間から多希の顔を盗み見る。その顔は、美しい悪魔を想像させるように、冷たく微笑んでいた。
「モモ」多希の指先が桃佳の頬に触れる。その指先は氷のように冷たくて、桃佳は一瞬震えた。
多希が目前に迫り、桃佳は一歩後ずさる。震えた足は、うまく力が入らずにぐらりとバランスを崩してしまう。
多希はさっと桃佳が転んでしまわないようにその体を支えると、やはり冷たい笑顔を浮かべて、支えた体を引き倒した。
「や、やめてください!!」
叫んだつもりだったものの、桃佳の喉は凍りついたように、か細い声しか出ない。
抵抗しようにも、濡れた服が体にまとわりついてうまくいかない。しかもバスタオルが首に巻きついてしまい、下手に動くと首が絞まってしまいそうだ。
多希は無表情のままで濡れた桃佳の服を首元まで捲り上げる。
蛍光灯の下で、桃佳の白い肌が露になり、胸元や鎖骨の辺りに散らばる赤い花びらを浮かび上がらせた。
それを見て、無表情だった多希の表情は、ほんの刹那苦しげに歪む。けれど、その表情はすぐに冷たいものに取って代わる。
そっと赤い花びらを指先でなぞられ、桃佳は動きを止めた。
「随分と激しかったのかな・・・?どんな風にされた?」
そう言いながら、ブラジャーをずらして、胸を露にする。
「こんな風にされて、気持ちよかった?」
言いながら、冷たくなった胸に顔を近づけて、キスをして中心部分を舐めあげる。
「・・・めて・・・」
「それとも、こっちのほうが好き?」
足にまとわりつくスカートも捲り上げて、足の間に指をねじ込と、敏感な部分をそっとさすった。
「どう?駿にはどんな風にされたの?」
「・・・やめてください」
桃佳は全身を震わせた。
それが寒さによるものなのか、恐怖によるものなのか、怒りによるものなのか、それとももっと別のものなのか、桃佳にはもう分からない。ただ、震えるばかりで、体に力が入らない。
じっと自分を睨むように見つめる桃佳を、多希もじっと見つめ返す。
「やめてください」
震えながらも、きっぱりと桃佳が言い放つ。
「・・・どうして?駿とやってきたんだろ?同じようなことを」
そう言いながら、再びわざと音を立てながら胸への愛撫を始める。指も下着の中へと滑り込ませ、体とは逆に熱いその部分に指を這わせる。
さっきまで駿が桃佳の中にいたから熱いのだと思うと、多希の頭の中は沸騰したように冷静さをなくしていく。
「駿はどんな風にするの?」
「お願い・・・もう、やめてください・・・」
桃佳が震える手で、多希の腕をつかむ。
「嫌です、私・・・。こんなふうにされたくない・・・!」
つかんだ手は震えるばかりで弱々しく、多希の行為を止めることはできない。
「嫌です。こんなの嫌です・・・!何もしないって、そう約束してくれたじゃないですか。だから嫌です!!約束を守ってください!!多希さん!!」
小さいながらも、悲鳴のようなその声に、はっとして多希は手を止めた。
「・・・お願いです。多希さんに、約束を破って欲しくない・・・。だから、お願いですからもう、やめてください・・・」
桃佳の瞳からは、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ちている。
いつか見た桃佳の涙の意味は分からなかった。けれど今は、確実に自分が桃佳を泣かせている。
多希は彼女に覆いかぶさるようにしていた体を離し、頬を伝う涙を指で拭う。あの日の冷たい涙とは違い、瞳から流れ出たばかりの涙は熱かった。
「多希さん・・・。お願いです。あの日の約束を信じさせてください」

せめてあなたは、これ以上私を惨めにしないで・・・。

桃佳は心の中で願いながら、じっと動きを止めた多希を見上げる。
無表情に桃佳を見つめていた多希は、その綺麗な顔を苦しげに歪めた。そして両手で桃佳の頬を包み込むと、その唇に自分の唇を重ねる。
「ん・・・う・・・」
乱暴な動作とは裏腹の優しいキスに、桃佳は目を閉じる。多希のキスに答えるかのように、自ら薄く唇を開き、舌を絡めた。
自分でも何をしているんだろうと混乱しながらも、震えながらその背中に腕を回し多希の体を抱きしめる。
止め方も分からなかった涙は、もう止まっている。
多希の唇が離れ、桃佳はそっと目を開けた。目の前には、やはり苦しげな表情のままの多希がいる。
「俺は駿じゃないよ」
そう言われて、桃佳は自分のしてしまったことが急に恥ずかしくなり、横を向いて顔を背けた。
多希はまだ頬に残った涙を指で拭い、それからぐっと拳を握る。
「・・・こんなことなら、あんな約束なんてしなければよかった・・・。お前のこと、めちゃくちゃにしてやればよかったんだ・・・!」
さらに苦しげに顔を歪め、桃佳の顔を見ることもなく、多希は彼女の部屋を去っていった。


自分の部屋に戻った多希は、力が抜けたようにベットの上に座り込む。
「あんな約束・・・しなければよかったんだ」
吐き出すように呟く。

そう、元々は駿を苦しめるために始めたゲーム。
手を出さないというルールは、面白いスパイスになると思っていた。
じわじわと、駿の大事な桃佳を追い詰めて、自分のものにしてやろうと。そして、最後には冷たく捨ててやるつもりだった。
それなのに・・・。

「最初から、めちゃくちゃにしてやればよかったんだ・・・。めちゃくちゃにして、捨ててやればよかったんだ・・・」

暗い部屋に苦しげな多希の声だけが虚しく響いた。


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