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りんどう庵

ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


6.どうして

2010.03.23  *Edit 

「そんな駿を裏切るって、どういう気持ち?」



その言葉に、桃佳はゆっくりと顔をあげて多希を見た。
多希はさっきまでの穏やかな笑顔とは違って、意地悪そうに笑って桃佳を見ている。

「・・・え・・・?」

大きな目をこれ以上ないというくらいに見開いて、蒼白になっている桃佳を見て、多希は小さく笑った。
「え?じゃなくって、酔って初めて会った男とホテルに行っちゃうっていうのは、どんな感じなの?」
多希の言葉に、体ががくがくと震えだす。
「ああ、ちなみにワタルってのは偽名。もしかして駿から俺の名前でも聞いてたらまずいと思ったんだけど、あいつ、兄貴がいることも言ってなかったみたいだね」
桃佳は寒くもないのにがくがくと震えの止まらない体を、自分で抱きしめるようにして体を丸めた。
「じゃ・・・昨日の・・・は、」
「俺だよ。眼鏡とかしてるから、印象違って別人とでも思った?それよりも、現実を受け入れたくなくて、別人だって信じ込もうとしてたって感じかな?」
多希は桃佳の様子がおかしくて「くくっ」と笑う。
あまりのショックに、桃佳は吐き気さえ覚えた。
体の震えも、一向に収まらない。
「ああ」
多希の声に、おびえた瞳を上げる。
「服の隙間から、赤いの見えてるよ。キスマークじゃない?隠さなきゃ」
ばっと、桃佳は両腕を胸元で交差させた。
「うそうそ、大丈夫。見えてないよ。その服、いい選択だったね」
楽しんでいる声。
そんな多希の声が、エコーでもかけたかのように頭の中で反響する。
口の中がからからになって、声も出ない。


「あったよ、兄貴。この箱の中にないかな?」


段ボールの箱を抱えた駿が、勢いよく部屋に入ってきた。
それは分かっていたけれど、桃佳は体の震えを止めることもできない。
多希に段ボールの箱を渡している駿は、そんな桃佳の様子には気づいていないようだ。
「違う?」
「ああ、これこれ。悪かったな、駿。ありがとう。・・・ところで、彼女、具合悪そうだけど大丈夫かな?」
「え?」
そう言われて桃佳を振り返る駿。
桃佳は血の気のない顔で小さく丸くなっている。
「清水!どうした?」
駿が駆け寄って、桃佳の肩に手を置いた。その体は、小さく震えている。
明らかに様子がおかしい。
「清水?」
「あ、・・・私・・・」
口の中が渇いて、うまく言葉が出ない。
そうでなかったとしても、この状況で一体どんな言いわけができるというのだろう?
「ごめん・・・な、さい」
それだけを、やっとの思いで声にする。
もしかしたら昨日、慣れないアルコールを飲みすぎたのかもしれない。
『昨日、ちょっと飲みすぎて・・・』駿は桃佳のその言葉を思い出していた。
「気にするなって。具合悪くなったんだろ?送って行くよ。歩けそう?」
こくんと小さく頷き、立ち上がろうとしたけれど、その瞬間に地面が大きく歪んだような気がして、桃佳はぐらつき駿に支えられた。
「あんまり大丈夫じゃなさそうだな・・・。タクシー、呼ぼうか?」


「俺、車で来てるから、送って行こうか?さっき、病院のそばに住んでるって言ってたでしょ?病院に寄っていくから、通り道なんじゃない?」


多希の言葉に、桃佳の体はさらに大きく震えた。
それでも、蚊の鳴くような声で「いえ、いいです」とやっと答える。
「ずいぶん調子悪そうだし・・・その様子じゃ、あんまり大丈夫そうじゃなさそうだよ。なあ、駿」
いかにも親切で、心配していますとでもいうような、多希の口調。
「そうだね、そうしてもらったらいいよ。兄貴、病院に寄るなら通り道だし。な、そうしてもらえよ」
桃佳はその提案を、首を振って拒む。
「大丈夫・・・」
そう言いながらも、足もとがよたよたと危なげだ。
「ほら、ふらふらしてるんだから、タクシー待ってるより兄貴に送ってもらった方が早いって。早く帰って休んだ方がいいよ」
「駿もそう言ってるし、遠慮しないで」
多希が桃佳に優しげに笑いかける。
「こういうときは、人の好意に甘えた方がいいんだぞ」
「で、でも・・・」
「いいから、ちゃんと休むように」
駿があわてた様子で、桃佳の荷物の用意をしている。
不意に多希が近づいてくると、「大丈夫?」と、声をかけてくる。
それから、ひそりと。
「俺の言うこと、聞いておいた方がいいよ。じゃなきゃ、恥ずかしい写真、ばら撒くかもよ?」
「・・・な・・・っ!!」
桃佳はこれ以上ないというくらいの、抗議の目を多希に向けたけれど、片方の口角をにっとあげて笑っている多希には、何の効果もないようだった。
恥ずかしさと悔しさとで、余計に体が震えてくる。
ふらふらする体で反論もできず、第一、多希の車に乗りたくない理由を駿に話せるはずもなく、桃佳は駿に促されるまま多希の車に乗せられた。

「じゃあ、兄貴、悪いけど・・・」
「気にしないで。ちゃんと清水さんを送り届けるから」
そのことに関しては何の心配もしていない。駿は、多希のことを全面的に信じている。
「やっぱ、俺も行こうか?」
そう言ったのは、やっぱり桃佳と離れたくなかったから。
「ううん。大丈夫、心配しないで」
思ったよりも力強い声に、駿は多少驚いた。
「そう?何かあったらすぐに行くから、いつでも電話して」
「・・・ありがとう」

そんなやり取りの後、車はゆっくりと動き出した。
桃佳の心は、さっきの多希の言葉でいくらか冷静さを取り戻していた。
『恥ずかしい写真、ばら撒くかもよ?』
これ以上悪いことなんて、もうそうはない気がしていたし、それよりもそんな写真が存在するのなら、取り戻さなければならない。
だからこそさっき、一緒に行こうかと言った駿の申し出を断ったのだから。
「なんか、さっきよりも落ち着いた?」
多希が車を走らせながら、横目で桃佳を見る。
「・・・写真なんて、本当にあるんですか?」
「あるよ」
多希は胸のポケットから一枚の写真を取り出して、桃佳の方に見せつける。
そこには、上半身何も身につけずに眠っているような、桃佳が写っていた。
「昨日セックスの後ぐっすり眠りこんでたから、せっかくだし記念にデジカメでね」
「返してください!!」
「うわっ!!危ないって!!」「きゃあ!!」
桃佳が震える声を上げながら多希の腕をつかんだので、ハンドルがぶれて車が蛇行する。
「死にたい?」
多希は桃佳のつかんでいる腕をぐっと上にあげ、離すように促す。
桃佳はうつむいて、多希の腕を離した。
「お願いです。返してください」
「どうぞ。まだいっぱいあるしね」
渡された写真を、桃佳はぐしゃりと握りつぶす。
「・・・何が目的なんですか?そんな写真まで撮って、どうしたいんですか?」
その質問に、多希は「うーん」と、首をひねる。
「そうだ、なあ」
そう言われてみたら、はっきりとどうするとは決めていなかった。
けれど、すぐに面白いことを思いついて、桃佳の方に長くてきれいな指を3本立てて見せた。
「ひとつめに、駿には昨日のことも含めて何も話さない」
「は?」
「ふたつめに、駿とは別れない。みっつめに、俺の言うことには従ってもらう。このみっつが守れたら、写真は絶対にばら撒いたりしないよ」
「それって・・・どういうことですか?」
多希は前を向いたままで、桃佳とは対照的ににこにこと笑っている。
「分からない?簡単なことだよ。駿とはこれからも俺とのことは話したりしないで、今のまんま付き合っていればいいの。で、俺の言うことは聞いてもらう。そうすれば、君の恥ずかしい写真は安全ってこと」
桃佳の頭は混乱していた。
多希の提示した条件は、理解できない。
何のためにそんなハチャメチャな条件を提示したのか。
「どうして・・・!!」
「もう質問に答えるつもりはない」
「でもっ」
「答えない」
ぴしゃりと言われて、桃佳はそれ以上何も聞けなくなってしまう。
そうしているうちに、車はすっと止まった。
「もうこの辺なら、君の家の近くでしょ?歩いて帰れるね」
確かに、周りの景色はよく見知った桃佳の一人暮らしのアパートのそばだった。
「さ、降りて」
促されて、桃佳はもやもやした気持ちを抱えたままで、車から降りた。
「じゃ」
「あ、あの・・・、ひとつだけ答えてください」
「しつこいなあ」
多希がため息をつく。
「質問の内容にもよるけどね」
「もしかして、昨日のこともあなたが仕組んだことなんですか?」
多希が色素のうすい、まるでガラス玉のような瞳で真っ直ぐに桃佳を見つめて、ふっとほほ笑んだ。
そう。
この計画は、ずっと前から自分が立てていたものに他ならない。
それがたまたま桃佳を巻き込む形になってしまったのは、ほんの少しだけ可哀そうだったかもしれないが。
「ああ、その答えなら、イエス、だよ。もういいね?」
立ちすくんで動けないでいる桃佳の代わりに、車内から自分で助手席のドアを閉めると、多希は車を発進させて他の車にまぎれて見えなくなってしまった。



『イエス、だよ』



「なんで・・・」
桃佳はその場にぺたりと座りこんだ。
自分がとんでもないことに巻き込まれたんだということだけは、はっきりとわかった。





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