りんどう庵

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

りんどう庵

ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


7.言えるわけがない

2010.03.23  *Edit 

桃佳にとってそれからの日々は、落ち着かないものだった。
多希から何かされるんじゃないか、そのことで、日々びくびくと過ごしていた。
確かに、多希は桃佳の家まで送ったわけではないので、家の場所は知らないだろうし、連絡先さえも知らないはず。
そう考えれば、彼が桃佳に連絡をとったり会ったりする可能性は低いものに思われたのだけれど、あの夜のことさえも多希が仕組んだものだった以上、これで終わるはずはない。
桃佳はゆっくり眠ることさえできなかった。


駿の家で多希と再会してから3日経ち、火曜日となっていた。
一向に多希からの連絡はないまま。

「桃佳〜。おはよ」
「あ、みなみちゃん。おはよう」
「うわ、桃佳。どうしたのその顔」
朝、教室で声をかけてきたみなみが、桃佳の顔を見て顔をしかめる。
「何が?」
「目の下、すっごいクマだし、顔色もゾンビみたい」
「はは、ゾンビって・・・」弱々しく笑う。
実際、この3日、ろくに眠れていない。眠れたとしても、奇妙な夢なんかを見てはうなされてばかりいた。
「もしかして・・・連日、駿君に眠らせてもらってないとか!?」
みなみが興味津々といった瞳で桃佳を見たけれど、当の桃佳はそんな冗談に付き合う気力はもはやないも同然だ。
「そんな・・・駿ちゃんとは土曜日から会ってないから」
心配して何度も電話をくれてこれから行くと言う駿を、桃佳はこの3日間、風邪をうつしたら困るからと、部屋に来ることを拒み続けた。
どんな顔をして会っていいのか、分からない。
すべてなかったことにして駿と一緒にいようと決めたけれど、あの夜の相手、多希が現れて、しかも駿の兄だったなんて、更にあの夜のことは多希の仕組んだことで・・・考えれば考えるほど頭は混乱して、この先駿と付き合っていくなんてこと、できないと思っていた。
無意識にため息が出る。
いつもと桃佳の様子が違うことに、みなみも気がついた。
もしかしたら、自分が誘った合コンのことで何かもめてしまったのかもしれない。
そうだったとしたら、なんと謝ったらいいのだろうか。
「ねえ、桃佳。何かあったんじゃないの?さっきはふざけてたけど、眠れないくらいに、辛いこと・・・」
みなみが気遣うように桃佳の顔を覗き込む。
目が合うと、みなみが心配そうにほほ笑んだ。
「何かあるんなら言って?力になれないかもしれないけど、話くらいなら聞けるよ」

じわり。
涙があふれてきて、視界が歪んだ。
みなみにあの合コンの夜から始まった全てのことを話してしまいたいと思った。
喉元まで言葉が出かかる。
「駿君と会ってないって、喧嘩でもした?」
桃佳は黙って首を左右に振る。
「そっか、駿君優しいから喧嘩なんてすることないか。ホント、駿君って桃佳に優しいもんね。桃佳、大事にされてるし羨ましいよ」
しゅるしゅると、喉元まで出かかっていた言葉が、煙のように消えていくのを桃佳は感じていた。
言えるはずがない。
最初から言えるはずもなかった。
駿は、桃佳にとっても大事な人だけれど、みなみにとっても大事な仲間なのだから。
みんなから信頼される『駿君』。
その人を裏切ったなんて言ってしまったら、正義感の強いみなみが今までのように桃佳を仲間として見てくれるだろうか?そう思うと、あの夜のことは少しも洩らすことはできない。
「桃佳?」
今度は怪訝そうな顔で覗き込んでくるみなみ。
「えっと。あの、ね。実は実家の犬が具合悪いらしくて・・・。それで、心配で」
口から出まかせ。
桃佳の実家では犬なんか飼っていない。
『うそ』
その嘘に、みなみも気が付いていた。
だけど、桃佳が話したくないのならば、無理に聞くべきではないと思ってそれ以上は何も聞かないでおくことにした。
桃佳はいつもそうやって自分の気持ちを抑え込む。
誰から聞いたのかはもう忘れてしまったけれど、桃佳は高校の頃にいじめにあっていたらしい。
そのことがもしかしたら桃佳をこんな風にしているのかもしれない、とみなみは思っていた。
どんなことがあっても桃佳を嫌ったりしないのに、でもそれはそのことを本人に言うよりも、みなみ自身が桃佳に信用されなければならないのかもしれない。
「そうなんだ。可哀そうだね。早く元気になるといいけれど・・・」
桃佳の嘘に気付かないふりをする。
「うん。ありがとう」
なんとか笑ってみせる。
「ワンちゃんも心配だけど、もうすぐ実習が始まるから、気持ち切り替えないと。倒れちゃうよ」
「うん。そうだね」
「また忙しくなるから、しばらく駿君とも会えなくなっちゃうんじゃないの?寂しいね」
「うん」
けれど、桃佳は内心ほっとしていた。
実習という理由で駿に会わなくても済むから。
寂しさよりも、安堵感。
逃げるしかできない自分が、桃佳は心底嫌になる。




桃佳の様子がおかしい。
駿はこの三日ずっと桃佳のことばかり考えていた。
『風邪をうつしたら困る』
と桃佳は言うけれど、桃佳の風邪ならばいつだってうつされてもいい。
むしろ桃佳の風邪ならば大歓迎だとさえ思っているくらいなのに。
それなのに桃佳はこの三日会ってはくれない。
それどころか、いつもよりもメールの回数も少ない。
桃佳のことばかりが頭に浮かんで、授業の内容もうまく頭の中に入ってこないありさまだ。
たった三日でこれじゃあ、俺は遠距離恋愛なんて絶対に無理だろうな、と駿は自嘲気味にふっと笑った。
今日の講義終了のベルを聞きながら、駿は「このままじゃどうしようもない」と、自分のカバンをつかむと立ち上がった。
「あれ、駿。もう帰るの?」
章吾が声をかけてくる。
「うん。ちょっと清水のところに行ってくる」


そう言って駿は桃佳の部屋へと向かった。
電話をかけてもきっと「風邪をうつしたら困るから」と、この三日間聞き飽きた言葉が返ってくるような気がして、電話をしないで真っ直ぐに桃佳のところへ向かう。
きっと桃佳は駿の急な訪問に驚くだろう。
だけど、それがどうしたって言うんだ。
俺は桃佳の彼氏なんだ。


いつもと違った強気な駿がそこにはいた。

『桃佳の様子がおかしい』

その不安感が、駿を昂ぶらせていた。
そこにはいつもの優しげな駿の表情はなかった。





cont_access.php?citi_cont_id=540009541&size=300よろしければ、ぽちしてやってください
【恋愛遊牧民】


←よろしければ拍手とコメントが送れます。
スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~

 管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。