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ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


70.罪悪感のない戯れ

2010.03.25  *Edit 

「駿、何飲む?」

声に振り返ると、美鳥が冷蔵庫の前でビールの缶とお茶のペットボトルを手に首をかしげている。
「ビールがいいな」
そう答えると、美鳥はにっこり微笑んで冷蔵庫を開け、お茶をしまってもう一本ビールの缶を取り出した。
ピンクに溢れる部屋……最初、駿にとってその部屋はあまり居心地のいいものではなかった。しかし、もうすっかりその明るい彩の部屋に慣れ、今では居心地が悪いなど微塵も思わない。
「はい、どおぞ」
体の横からにゅっとビールの缶が差し出され、肩に柔らかな重みと甘い香りを感じる。後ろから抱くような格好で、美鳥が駿の肩に顎を乗せている。彼女のさらさらとした髪が、駿の頬をくすぐる。
「ありがとう」
差し出された缶を受け取り、リングプルを持ち上げる。ぷしゅっと、涼しげな音が響いた。
美鳥は駿の肩に顎を乗せたままで、自分の分のビールをテーブルの上に置き、ごそごそとポケットをまさぐると『何か』を駿の目の前にぶら下げる。
「これ、もしかして駿の?」
「これ……」
目の前に差し出された小さなもの。駿は手を伸ばして受け取る。
「やっぱり駿のだったんだ。昨日部屋に落ちてるのに気が付いたんだ」
落し物を落とし主に渡せたことに満足なのか、美鳥はくすくすと笑いながら、駿の前に伸ばした腕を今度はその首に巻きつける。押し付けられた美鳥の体。背中に柔らかな弾力を感じて、駿の鼓動は一瞬早くなる。
「ねえそれ、ご当地キューピーってやつでしょ? 駿ってそういうの好きなんだ?」
駿は美鳥に渡された小さなストラップを見つめる。
それは紛れもなく桃佳から渡されたものに他ならない。ついこの間まで、このストラップを見つめては自分のしてしまったことに後悔したり、傷つけてしまっただろう彼女のことを思ったりしていたはずなのに、駿は美鳥から渡されるまで失くした事にさえ気が付いてはいなかった。
なんだか自分のそんな変化が可笑しくて、駿は小さく笑う。
「それ、紐の部分が切れちゃってるね」
「ああ」
ぎゅっとストラップを握り締め、駿は乱暴にそれをポケットの中に突っんだ。ちりんと小さな鈴の音が響く。
切れてしまったストラップ。抗議するような鈴の音。
まるで桃佳が自分のしていることに傷つき、怒っているような気がしたものの、罪悪感は不思議と起こらない。後悔の気持ちも、後ろめたさも……
首に回された美鳥の腕を引き、そのまま押し倒す。
押し倒された美鳥を見ると、少しも困惑した様子は見せず、さっきと同じようにくすくすと笑ったままだ。そして、自分から駿の肩に腕を回して引き寄せると、薄く唇を開いて口付ける。狭い部屋に、ふたりの口付ける音だけが響く。深く激しいその行為の音は、明らかな水音を伴って響いた。
呼吸を忘れるほどの深いキス。どちらともなく唇を離すと、ふたりとも息が弾んでしまっている。
「駿のキス、好きよ。気持ちいいから」
「俺も美鳥の体、好きだよ。気持ちいいから」
「……それ、褒め言葉ね」
妖しく目を細めながらそっと頬をなぞる美鳥の指先を握り締め、濡れて輝く唇に吸い付いた。自分の中の衝動を、もう抑えることはできそうもない。それ以前に、駿はもうその衝動を抑えようとも思わない。ただ、欲望のままに美鳥の唇を吸い、舌を捻じ込み、衣服を剥ぎ取って思うままに愉しむだけ。
「ぁあんっ、しゅ……ん、っ!」
美鳥は、駿の行為に甘い声で答える。
「もっと……っ、あ!!」
更に刺激をと、求める美鳥の声は、駿の心も身体も否応なく興奮させた。その声に応えるように、駿はもっと彼女を愉しませたくて、指で舌で唇で刺激を与え続ける。
硬く尖った胸の先端を甘噛みし、わざと音を立てて吸い付くと舌で転がす。そうしながらも、足の間に指を滑り込ませ、十分に潤んでいるそこに指を二本つき立てかき回した。
ともすれば痛みを伴いそうな快感に、美鳥は声にならない声を上げながら背中を反らす。そんな様子が、一層駿の興奮を高めた。
「見せて、全部」
桃佳とのセックスでもそんなことをしたことはない。いつも気遣ってばかりの行為だったから。けれど、美鳥との行為は駿を自由にする。美鳥の足を大きく広げ、全てを自分の前に晒す。濡れて光るそこに、駿はそっと口付けた。
「……ぃぁ……あぁ、だ、めぇぇぇ……」
悲鳴に近い、かすれた美鳥の声が駿の耳にも届く。その艶かしい声に、脳みそは沸騰しそうだった。甘い声をもっと聞きたくて、駿は一番敏感な部分に舌を這わせる。美鳥は駿の期待通りに、甘い声を紡ぎ続けた。その声が、呼吸が、どんどんと荒くなっていく。
「……っぁああ、っもう、だ、めぇぇ……、お願い、きてぇぇっ!」
自分を求められることの悦びを、駿は美鳥との行為で知った。
潤んだ瞳で見上げられ、ただ自分の存在を求められることの悦びを。
美鳥の足を高く持ち上げ、腰を打ち付ける。もしかしたら、壊してしまうんじゃないかと思うくらいに激しく、何度も……
「ああっん、ん、……!!」
切なげに潤んだ瞳を細め、美鳥が駿の体に抱きついて、その背中に爪を立てる。駿の背中に鋭い痛みが走った。背中に爪の食い込む感覚を味わいながらも、それさえ甘く染み渡ってくるようだ。
登り詰めていく美鳥を見つめながら、自分ももう限界に達しそうなのを知る。
快感を分け合うように、更に深く腰を打ち付け、唇の間から覗く舌に吸い付く。
「…………っ!!!」
声さえ奪われて、ただ腕の中で痙攣する美鳥を強く抱きしめ、駿もまた欲望を全て吐き出した。



「なんか、どんどん駿、激しくなってくね」
美鳥は何も身に着けないままで仰向けに転がり、顔だけ駿に向けてにっこりと笑った。他意は含まない、無邪気な微笑を。
「美鳥の身体がやらしいから」
駿も彼女と同じように裸のままで床に転がっている。
「それも褒め言葉として受け取っておくね」
「勿論、褒め言葉以外の何でもない」
そう言いながら駿は、床に広がる美鳥の髪を一房手に取り、そのさらさらとした感覚を楽しんだ。
「それにしても、今日も終電行っちゃったんじゃない? 毎日こうだと、家の人うるさく言わない?」
ちらりと時計を見た美鳥は、一応そう言ったものの、その口調は特別心配した色を含んではいない。自分は心配される対象ではないということがあからさまで、思わず駿は笑った。
「ああ、別にタクシーで帰ってもいいんだ。そんなに遠くないから。それに、俺、ここに来ると落ち着くから」
「落ち着く?」
仰向けに転がっていた美鳥が、不思議そうな瞳を向ける。
「うん。落ち着く」
「よっぽど彼女と一緒の時にはくつろげないんだね」
大げさにため息をついてみせる美鳥に、駿は黙ったまま苦笑を向けた。

この部屋に来ると落ち着くのは本当。
だからこそ、初めて美鳥と身体を合わせた金曜日から、連日この部屋に入り浸っている……入り浸っているといっても、夜だけ。そして、何度も何度も美鳥の身体を貪った。
美鳥との関係は、身体の繋がりだけ。
その都合がいいだけの関係は、妙に心地よかった。相手のことを思って苦しむことも、欲求を抑えることもしなくていい。ただ、お互いに快感を求め合えばいいだけ。

そんなことを考えて、もう一度駿は苦笑する。
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
「ふうん」さっき不思議そうに駿を見ていた瞳は、今度は面白がるような光を放っている。「もしかして、彼女のことでも考えて後悔してたりして」
「後悔?」
「違うの? じゃ、罪悪感」
「罪悪感ねえ……」
どちらの言葉も、今の駿にはぴんとこない。そのどちらも、明らかに今の自分には当てはまらないような気がした。
「もしかして、後悔も罪悪感もないの?」
驚いたような表情を向ける美鳥に、妙に神妙な顔で駿は頷いた。
「やだ……呆れた。気が小さいかと思ったけど、意外と肝が据わってるのかもね」


肝が据わっている?
いや、そんなんじゃないな……

天井を見ながら、駿は心の中で小さく呟いた。
きっと身体は美鳥に溺れても、心は桃佳に向いていると、そんな根拠のない自信が駿の中にはあったから。だからこそ、この身体だけの関係に罪悪感は抱かないのだと。
きっとストレスを解消するために、スポーツジムに通ったり、買い物をしたりするのと一緒なんだと、どこか麻痺した頭で考える。

だから俺には、結局は清水だけなんだ……

これはただの戯れに過ぎない……

そう、信じていた。


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