りんどう庵

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りんどう庵

ぴ~ち・でぃず~ヒミツノカンケイ~ *R18


89.情と欲情

2010.05.10  *Edit 

「駿ちゃん、遅れてごめんね」
微笑みながら駆けて来る桃佳に、駿も微笑みを返す。桃佳の薬指には、先日贈った指輪が光っている。それだけでひどく満たされた気持ちになった。
「その指輪、外してないの?」
わかっていながら、ついそんなことを聞いてしまうのは、もっと満たされたいから。
「え? うん。ずっとつけてるよ。傷つけないように気を付けてる」
はにかんで答える桃佳に、つい駿も照れてしまう。そして心がほわりと温かくなった。目の前に桃佳が居てくれることの喜びを噛み締める。

「今日ね、それでレポートやり直しって言われちゃって……もう、今日は眠れないかもしれない」
いつになくおしゃべりな桃佳を、駿は少しだけ不思議そうに見つめる。その視線に気がついて、桃佳は首を傾げた。
「……なに?」
「いや、なんだか今日は随分としゃべるなって思って」
駿としてはおしゃべりな桃佳は大歓迎なのだけれど、彼女の方はバツが悪そうに苦笑いを浮かべた。本当は必死になって話すことを考えていたから。

……この前、「清水の気持ちが落ち着くまで何もしない」と駿は言ってくれた。そのあたたかな腕に抱かれ、桃佳の心にあったしこりは小さくなった。そう、小さくなった。けれど消えてはいないのだ。まだあの日の記憶は生々しく心にも体にも刻みつけられている。
だから桃佳は沈黙が怖かった。
「そうかな? いつもそんなにしゃべってない? そんなことないと思うんだけれど」
けれどそんなことを悟られて、駿のことを傷つけたくはない。だからこそ桃佳は明るく振る舞う。
「そうかな?」
「そうよ」

美鳥なら、いつだっておしゃべりだけどな。
にっこりと笑う桃佳を見て、駿は心のどこかで美鳥と桃佳を比較していた。無意識に。



「じゃあ、お先に失礼します」
返却されたDVDをすべて棚に戻し終わる頃には、バイトが終了する時間を20分ほど過ぎていた。同じ時刻にバイトが終わるはずの美鳥は、終了時刻とともにさっさと「お先です!」と明るい声をかけて出て行ってしまっていた。
まだ美鳥はロッカールームにいるだろうか……そんなことを考えながら、駿はそこに早足で向かう。ロッカールームのドアノブに手をかけた時、中から言い争うような声が聞こえてきた。それは紛れもなく先に上がった美鳥のものだ。そしてもう一人誰か……駿は耳を澄ました。

「もういい!! 別れたいって言ったのはそっちの方じゃない! もう新しい彼女だっているんでしょ? なんで今更私のところに来るのよ!!」
ひどく興奮した美鳥の声がはっきりと聞こえてくる。
「だから、あの女とはもう終わったよ。あの女……俺の他にも男がいたんだ。冗談じゃない。だから俺は騙されてたんだよ。なあ、美鳥。だからもう一度よりを戻そうぜ」
男の声はそんなことを言っていた。どう考えても酷く自分勝手な言い分。だんだんと駿は腹が立ってくる。
「なあ、お前だって本当はそうしたいんだろ? もう、浮気なんてしないよ」
「そんなの……信じられない……」
そんなわけないだろ!!と、駿は心の中で男の声に突っ込みを入れる。男の声は芝居がかっているのに、美鳥の声はいつもの勢いがない。迷うような、弱い声。それが一層駿を苛つかせる。
「だからさ、やり直そう」
「……やっ、もう、終わったじゃない……」
「美鳥」
「や、やめてぇ……」
微かな衣擦れの音。静まり返る室内。中で何が起こっているのか、その情景が頭に浮かんだ時、駿は何も考えずにドアノブをひねっていた。
わざと音を立てるようにドアを開けると、思っていた通り美鳥が男に抱き寄せられている。ドアの方を向いて抱きすくめられている美鳥が、驚いたように目を見開いて駿のことを見た。そして男の腕からするりとぬけ出す。
「……ここ、関係者以外立ち入り禁止なんですけど」
できるだけ押し殺した声でそう言うと、美鳥を抱きしめていた背の高い金髪の派手な男は、美鳥と駿を見比べて「ちっ」と小さく舌打ちをしてドアの方に向かう。
「美鳥、また連絡するよ」
そう言うとロッカールームから出て行った。

部屋に残された美鳥は、赤い顔をして床を見つめている。
見たこともないようなその恥じらったような表情に、やはり駿は苛ついた。
「……今の、元彼?」
その問いかけに、美鳥は赤い顔をしたままで口をへの字に曲げる。
「駿には関係ないよ」
その言葉に駿は言葉を無くす。確かにそうだ。自分は彼氏でも何でもないのだから。そう思うと、さっきまで感じていたイライラはどこかに鳴りをひそめた。そしてその代わりに何とも言えないバツの悪さが駿を包む。
美鳥は床に落ちていたカバンを拾い上げると、肩にひっかけて駿の前に立つ。
「駿、今日も来るんでしょ? さ、行こうよ」
「え? ……あ、ああ」
いつものようににっこりと微笑む美鳥と一緒に、駿はロッカールームを後にした。


ピンクに溢れかえる部屋に着いた途端、美鳥は何も言わずに駿のことを押し倒した。
「み、美鳥!?」
驚く駿に構わずに、美鳥は駿のジーンズのジッパーを下げてまだ柔らかいそれを口に含む。舌先でなぞるように吸い上げられ、しかも明るい部屋の中でそんなことをされ、駿の意志とは別にそこはすぐに興奮し始める。
「あ……み、美鳥……ぅっ」
美鳥のあたたかな唇と舌の感覚に、どうしようもないほどの快感がこみ上げてくる。油断すると、そのまま達してしまいそうだ。
そんな駿の表情を上目遣いで見上げ、美鳥はそっとそこから唇を離す。そしてスカートはそのままにショーツだけ脱ぎ去ると、硬くなった駿のものの上に一気に腰を下ろした。
「ぁアア……ンっ」
駿の上に跨り、何度も何度も体を揺らす。一度も触れてはいない美鳥のそこは、いつもよりもずっと濡れていやらしい音を立てている。
より深く、とでも言うように激しく腰を打ちつける美鳥に、駿もどんどん快感が引き上げられていく。駿の上で体を揺らす美鳥は、目を閉じたままで頬を上気させて切なげな声を上げていた。

誰のことを考えてセックスしてるんだ……?
誰とセックスしてるつもりになっているんだ……?

そんな思いが駿の中で弾け、駿は美鳥の細い腰を掴むと、乱暴にその体を組み敷く。
「美鳥」
そう声をかけると、美鳥はうっすらと目を開けて駿を見た。ふたりの視線が絡み、それに引かれるように駿は美鳥の唇に激しいキスを落とす。
「ンん……ンっ」
息もできないほどの深くて激しいキス。舌と舌を絡ませ、吸い、犯す。唇を離しても尚、ふたりの唇は透明な糸で繋がっている。濡れた美鳥の唇にもう一度深くくちづけて、駿は激しく美鳥の体を突き上げる。
「ァあああ!!! き、気持ち……イイ!!」
もしかしたら痛いのではないかと思うほどの激しさで突き上げ、仰け反る白い首筋にキスをする。額から汗が滴り、美鳥の体の上に落ちる。それでも駿はやめない。
誰かと比べられないように、今セックスしている相手が自分だと、美鳥の体に教え込むように激しく、激しく……

「しゅ、んン……っ、も、だ、めぇ……ぅぁ……ァアああああン、ン、あああああ!!」
潤んだ瞳が見開かれ、美鳥の体が激しく痙攣する。
それを確かめて、駿もまた達した。


「美鳥」
「ん?」
脱ぎ捨てたままだったショーツに足を通しながら、美鳥が振り返る。
「……いや、なんでもない」
「? そう」

さっきの男、元彼なんだよな? 
もう会うなよ。

喉元まで出かかったそんな言葉を、駿は慌てて飲み込んだ。
そんなことを言ってもまた、「駿には関係ない」と言われて終わるに決まっている。それに、そんなことを言う資格は自分にはないこともちゃんと理解していた。
最初から体だけの都合のいい関係と割り切って、こうして美鳥と体を重ねているのだから。お互いに寂しさを埋めるだけの関係。足りない何かを埋めあう関係。
なにをどう言ったところで、ただの体の関係でしかない。
セフレというやつだ。

駿には桃佳がいる。
けれど桃佳に触れられない寂しさを美鳥で埋めてきた。寂しさを美鳥で埋めるたびに、どこかで駿は癒されていた自分に気がつく。
美鳥とのセックスはいつだって駿に自信をくれた。美鳥に快感を与えて昇りつめていく様を見ているのは、体とは別に気持ちがよかった。それは桃佳とのセックスでは得られなかったものかもしれない。

だから……か?
だから元彼と会ってほしくないのか? よりを戻したら、美鳥との関係は終わってしまうから。もう、美鳥を抱けないから。

仰向けに寝転びながら、そんなことを考える。そして、そんな自分の汚い考えに眉を寄せた。
桃佳という人がいるのに、美鳥のことも手放したくない自分。
心は桃佳に、体は美鳥に。そんなどっちつかずの状態が、酷く気持ちが悪い。それでも変えられない自分。純粋に思う心と、欲望に従ってしまう心。弱い自分。

「駿、どうしたの? おっかない顔してるね」
覗きこんできた美鳥を引き寄せ、唇で唇をふさいで抱き寄せる。
「ン、どうしたの? 一体」
困ったような顔でくすくすと笑う美鳥の耳元にそっと囁く。
「……関係ないなんて言うなよ」
「え? なに?」
「……なんでもない」
そのまま美鳥の胸の膨らみを掌で弄び、首筋に舌を這わせていく。
「ァ、やぁ……もう、今したばっかりじゃない……ン、ンんっ」

熱くなっていく自分の中心を感じながら、この体を誰にも渡したくはない、と駿は思った。
その思いは体を重ねることで芽生えた情なのか、それともただの欲情なのか、今の駿には分からない。ただ、美鳥と体を重ねたいと、そう思った。

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